「住宅は住むためのものであり、投機の対象ではない」

 中国政府の不動産融資に対する規制強化が引き金となり、巨額の負債を抱えている中国の不動産大手、中国恒大集団が経営危機に陥っている。取引先への未払い分などを含めた負債総額は1兆9665億元(約33兆4000億円)。経営破綻して全世界に深刻な経済危機を引き起こしたリーマン・ブラザーズの負債総額6130億ドル(約63兆8000億円)の半分に相当する金額だ。9月23日以降、立て続けに米ドル債や人民元債の利払い日を迎える予定で、債務不履行の可能性が高まる。

 香港、欧州、米国、日本。9月20日、世界の株式市場は総崩れとなった。恒大が巨額債務を抱え破綻する可能性が視野に入ってきたからだ。

 恒大の株価は年初から8割ほど下落しており、市場では経営危機そのものについてはある程度織り込んできた。それなのに、ここに来てさらに下落しているのは一部で期待されてきた中国政府による救済の可能性が減ってきており、ハードランディングした時の影響が読み切れないという懸念によるものだろう。

 1996年に創業し、わずか四半世紀でその破綻リスクが世界経済を揺るがすまでに巨大化した恒大とは一体どのような企業なのか。創業者である許家印会長の半生をたどりながら見てみよう。

文化大革命で高校卒業後は農業に従事

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この記事はシリーズ「広岡延隆の「中国ニューノーマル最前線」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。