最初からIoTを想定して設計

 ソフトとハードの両面で手足を縛られた格好のファーウェイは昨年11月、スマホの中下位機種事業を分離・売却することを余儀なくされた。調査会社の米IDCによれば2020年4~6月に世界首位だったファーウェイのスマホ世界シェアは、21年1~3月には5位以内に入れずランキング圏外となった。21年1~3月期の売上高は前年同期比16.5%減の1522億元(約2兆6000億円)と、20年10~12月期に続いて2四半期連続減収となった。

 ファーウェイは、厳しい状況の中でどのような将来を描いているのか。今回のハーモニーOSの発表から全体像が浮かび上がってきた。

 ファーウェイはハーモニーOSの中核部分をオープンソース化し、誰でも利用できるようにしている。その上で、アプリストアなど「HMS(ファーウェイ・モバイル・サービス)」を独自サービスとして提供する。ここまでは、グーグルのアンドロイドと同様の戦略と理解すればよい。

 違いは、アンドロイドがスマホを念頭に開発されたのに対して、ハーモニーOSはもともとIoT(モノのインターネット)デバイスや産業用機器に組み込む用途を想定して開発が進められてきたため、スマホよりも低スペックな機器でも動作する設計思想になっていることだ。グーグルが「幅広い機器向けのOSを構築するための長期プロジェクト」として開発を進める新OS「Fuchsia」とコンセプトは近そうだが、商用化ではファーウェイが一歩先んじたことになる。

 もはやスマホ事業の成長が見込めない中で、ファーウェイは自動車と家電、スマートウオッチなどIoT分野に狙いを定めた。様々な機器におけるネット接続が本格化すれば、置き換えや新規需要創出など市場規模拡大の余地は大きい。

 ただし、競争が激しい最終製品までファーウェイがすべて提供するのは現実的ではない。そこで、ファーウェイは各種デバイスで利用できるOSをオープンソースとして提供することで「プラットフォーマー」としての地位を取りにいった。スマホOSではグーグルやアップルに勝つことは難しいが、IoT機器を含めたOSへと土俵を変えることで勝機を見いだそうとしている。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り813文字 / 全文2875文字

【春割/2カ月無料】お申し込みで

人気コラム、特集記事…すべて読み放題

ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「広岡延隆の「中国ニューノーマル最前線」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。