6月1日、2カ月に及ぶ大規模都市封鎖(ロックダウン)が解除され市民が外出できるようになった中国上海市。解除初日は多くのショッピングモールが営業を再開。街に繰り出した市民の顔には、喜びがあふれていた。
商店の入り口には、封鎖シールが貼られたままになっているところも多い。春節(旧正月、2022年は2月1日)の飾り付けが残っているところもあり、封鎖期間の長さを実感する。

上海市の4月における自動車の新車販売台数はゼロ台と、中国最大の経済都市の消費は壊滅的な状況に陥った。上海港の物流も機能マヒ状態になり、中国経済はもちろん世界経済に対する影響は年内を通じて残る可能性が高いとされる。
だが、解除初日には米テスラの販売店で説明を受ける家族連れや高級ブランド店で買い物する人も見られるなど、明るい兆しも感じられた。飲食店などは地元政府の指示により営業再開していないところが多い。行きつけのコーヒーショップの店員を見かけて「もう買えるの?」と聞いたところ、「きょうはまだ営業再開できない。まずは店内を掃除しないとね」との笑顔で答えが返ってきた。


都市封鎖が解除されたとはいえ、上海では中国の他地域よりも厳しい防疫措置が続けられている状態だ。そんなロックダウン解除後の上海の「新常態」を表すのが、公共交通機関やマンション、店舗の入り口に必ず貼られるようになったQRコードだ。「場所コード」と呼ばれ、専用アプリでスキャンすると時刻、場所と共に最新のPCR検査の時刻と結果が表示される。72時間以内に陰性でないと、その場所には入れない。
つまり都市封鎖の解除は「移動制限がなくなった」ことを意味しているのではない。むしろ「移動制限は残るが、72時間以内の陰性証明があれば緩和される」という理解の方が、今の上海の実態に即している。「帰宅時に72時間を超過していたら、マンションに入ることもできなくなるのか」と不安を漏らす上海市民も複数いるのが実情だ。
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