今、上海市で新型コロナウイルスに感染していないのに強制的に隔離施設に移送される事例が相次いでいる。

 5月8日ごろから上海市の防疫政策の極端さが目立つようになってきた。マンションで感染者が出た場合、広範囲に隔離対象とする方針を取り始めたのだ。キッチンを共用しているような古い住居では1棟丸ごと、そうではない新しい建物については同フロアおよび上下に住む人を隔離するのが原則だが、実際には現場の裁量が大きい。隔離期間中には対象者からカギを預かって担当者が部屋に立ち入って消毒作業を実施する。実際、水浸しになるほどの消毒液を家財道具に噴霧している動画が公開されている。

上海では防疫政策の極端さが目立つようになってきた(写真:ロイター/アフロ)
上海では防疫政策の極端さが目立つようになってきた(写真:ロイター/アフロ)

 「上海市は強制的な手段を用いて住民を隔離施設に送ることは直ちにやめるべきだ」。中国の憲法学者、華東政法大(上海)の童之偉教授は5月8日、ソーシャルメディアに違法性を指摘する意見書を投稿した。北京大や復旦大、上海交通大などの教授20人あまりの見解を取り入れたとしている。

 当時、「好き勝手は許さない。ここは米国ではなく中国だ」「従わなければ処罰の対象になる」。防護服に身を包んだ当局者が抵抗する一般市民にこう言い放って強制移送しようとする動画が出回り、市民の間で不安が高まっていた。だが、童教授の意見書はまもなく「規則違反」としてソーシャルメディア上から削除され、同教授のアカウントは投稿を禁じられた。

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この記事はシリーズ「広岡延隆の「中国ニューノーマル最前線」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。