「今後10年で最も破壊的な産業の変化」

「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリングサービス、電動化)」はこれからの自動車にとって必須の技術開発だが、それに対応できる十分な資金と人材を有する自動車メーカーは少ない。現在、ファーウェイの自動運転ソリューションを全面的に採用することが明らかになっているのは北京汽車、長安汽車、広州汽車の3社だ。いずれも日米欧のメーカーとの合弁などを通じてハードウエアとしてのクルマを生産する能力を培ってきた中国の現地メーカーだが、規模や地力を考えれば米テスラやトヨタ自動車、ドイツのフォルクスワーゲンなどに対抗してCASE分野において優位性を確立することは難しいだろう。

 中国国内の自動車メーカーに同様の事情を抱えているところは多い。ファーウェイはこうした企業に自動運転EVを迅速に開発できるプラットフォームを提供することで、CASE時代に不可欠な「ティア1」としての地位を確立することを狙っているようだ。徐輪番会長は「中国は3000万台市場で今後さらに増える。ファーウェイはその中で1台1万元の収益を上げられればよい」と説明する。

 もちろん自動車に力を入れる中国IT企業はファーウェイだけではない。中国のネット検索最大手の百度(バイドゥ)は今回、上海モーターショーに初出展した。自動運転プラットフォーム「アポロ」を開発しており、湖南省長沙市や北京市などで自動運転タクシーの実証実験を行ってきた。発表会に登壇した同社幹部は、「アポロの技術を搭載したクルマが、今年後半から毎月1車種のペースで発売される」と宣言した。新興EVメーカーの威馬汽車が4月16日に発売したEVにも、百度の自動駐車システムを搭載している。スマホ大手の小米(シャオミ)は今年3月、1兆円以上を投じてEV事業に参入すると表明した。

上海モーターショーの百度ブース
上海モーターショーの百度ブース

 日系各社は今回のモーターショーで電動化を軸に打ち出した。トヨタ自動車はEVの新ブランド「bZ」を立ち上げると発表し、第1弾としてスバルと共同開発した多目的スポーツ車(SUV)「bZ4X」をお披露目した。ホンダは5年以内に中国で10車種のEVを投入すると発表した。日産自動車は25年までにEV9車種を計画するほか、ガソリンエンジンで発電する「eパワー」技術などの投入を進める。日産と東風汽車集団の合弁である東風汽車の山崎庄平総裁は、中国IT大手の自動車産業への参入が相次いでいることについて「CASEのあらゆる面で中国は独自の進化を遂げている。協力についてはオープンに考えている」と述べる。

 中国の2020年の新車販売台数は新型コロナウイルス流行の影響を受けて前年比1.9%減の2531万1000台だった。ただし、EVを中心とする新エネルギー車(NEV)については10.9%増の136万7000台となった。中国政府は自動車全体に占めるNEV販売比率を現在の5%から25年には20%前後に引き上げる目標を掲げており、多くの業界関係者が「十分に達成できる水準だろう」とみる。

 世界最大の自動車市場である中国で起きている急激な変化は、今後の自動車産業を占う試金石となるだろう。

この記事はシリーズ「広岡延隆の「中国ニューノーマル最前線」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。