2020年10月末、中国共産党第19期中央委員会第5回全体会議(5中全会)が開催され、第14次5カ年計画の基本方針が決まった。習近平氏が最高指導者となってから作成する2回目の5カ年計画である。今年3月開催予定の全国人民代表大会(全人代)で確定版が採択される予定だ。
第14次5カ年計画の基本方針における最大の特徴は、具体的な経済成長率の数値目標を示さなかったことにある。習氏は「35年までにGDP(国内総生産)と1人当たり所得を(20年比で)倍増させることは可能」としつつも、新型コロナウイルスの感染拡大といった内外の不確定要素を考慮し「経済構造の最適化に、より注力する」と説明した。全人代で計画を確定する際に数値目標を打ち出すことは「かまわない」としている。
5年前と比較すると、そのトーンは明らかに変わっていることがわかる。習氏は20年が最終年だった13次5カ年計画の基本方針を説明する際、「期間中の経済成長率は少なくとも年平均6.5%が必要だ」と明言していた。
量から質への転換を強調しているのは、中国の潜在成長率が低下してきていることの裏返しだ。
中国は新型コロナを抑え込んだことで、20年は主要国で唯一となる経済成長を果たした。ただし、それは他国との相対的な話である。高い経済成長率を誇った時代は終わり、GDPの伸びが鈍化傾向にあるという中国経済のトレンドそのものが変わったわけではない。中国社会科学院工業経済研究所の李雪松副所長は今後5年の中国の潜在成長率を5~6%と試算し、「年平均成長率の目標は5%前後に設定するのがよい」と述べている。
デジタルで目指す基軸通貨

質への転換を進める中国が描く未来はどのようなものだろうか。第14次5カ年計画には「人民元国際化の慎重な推進」という目標が盛り込まれた。そのための重要なツールになりそうなのが「デジタル人民元」だ。中国人民銀行(中央銀行)は他の中銀に先駆けて14年にデジタル通貨の研究を始めており、19年には「いつでも利用できる状態」になったと宣言している。
「総額1000万元の紅包(ご祝儀)を配る」。地元政府の呼びかけに、新しいもの好きの深圳市民が飛びついた。昨年10月、人民銀行と深圳市がデジタル人民元の実証実験を開始したのだ。
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