「爆弾発言があるようですよ。馬先生どうぞ」。2020年10月、上海市で開催された「外灘金融サミット」でアリババ集団創業者の馬雲(ジャック・マー)氏はこう司会者に促されて演壇に上がり、「爆弾ではないですよ。そんな、あえて爆弾を投げるなんて」と苦笑してから講演を始めた。そこで発した言葉が我が身を焼くことになろうとは、そのときは予想していなかっただろう。
同講演でマー氏が「世界史上最大の上場が、ニューヨーク以外で行われるのは今回が初めてだ。5年前、いや3年前ですら想像もできなかったが、奇跡が起こっている」と胸を張ったアリババ傘下の金融会社、アント・グループの香港と上海での同時上場はこの講演の数日後、当局の指導であえなく延期となってしまった。
さらに、アリババにとって1年で最も重要なセール開催日である「独身の日」の前日の11月10日、規制当局はインターネット企業の独占的慣行の根絶に向けた規則案を公表。12月には浙江省杭州市のアリババ本社を調査した。
金融サミットから2カ月余り。マー氏が公の場に姿を見せなかったことが欧米メディアや中国のネット上で話題となった。自身が慈善活動として力を入れていたテレビ番組の出演もキャンセルになった。顧問を務める清華大学経済管理学院が12月3日に開催した顧問委員会の様子を報じた記事にも、名前が見当たらない。

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この記事はシリーズ「広岡延隆の「中国ニューノーマル最前線」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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