「もしトランプ氏が再選したら」──。米シンクタンクの外交問題評議会で日本の政治や外交を担当し、東京大学や慶応義塾大学に研究者として在籍していたこともあるシーラ・スミス氏に「もしトラ」を聞いた。

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ドナルド・トランプ米大統領が先日、新型コロナウイルスに感染して入院する騒ぎがありました。この出来事をどう見ていましたか。

外交問題評議会の上級研究員(日本担当)。1996年、コロンビア大学大学院政治学研究科博士課程修了。米ハワイのイースト・ウエスト・センター研究員などを経て、2007年より現職。日米文化教育交流会議(CULCON)米国側副委員長、日米次世代パブリック・インテレクチュアル・ネットワーク・プログラム(モーリーン&マイク・マンスフィールド財団主催)シニアアドバイザー、ジョージタウン大学非常勤教授を兼任。著書に『日中 親愛なる宿敵:変容する日本政治と対中政策』(東京大学出版会、18年)などがある。
外交問題評議会の上級研究員(日本担当)。1996年、コロンビア大学大学院政治学研究科博士課程修了。米ハワイのイースト・ウエスト・センター研究員などを経て、2007年より現職。日米文化教育交流会議(CULCON)米国側副委員長、日米次世代パブリック・インテレクチュアル・ネットワーク・プログラム(モーリーン&マイク・マンスフィールド財団主催)シニアアドバイザー、ジョージタウン大学非常勤教授を兼任。著書に『日中 親愛なる宿敵:変容する日本政治と対中政策』(東京大学出版会、18年)などがある。

シーラ・スミス上級研究員(以下、スミス氏):個人的な見解としてですか?(笑)

いえ、ぜひ専門家の視点で……。

スミス氏:そうですよね(笑)。短期的な視点で見れば、11月3日の大統領選の投開票日までのタイムスケジュールに何らかの変更は出るでしょう。

 彼が感染した後に取った行動でどうしても解せないのが、SUV(多目的スポーツ車)で入院先の病院から外出し、外に集まったトランプ支持者たちにあいさつをしたことでした。

 あの行動は本当に多くの人たちを怒らせました。(SUVに同乗した大統領警護隊員など)他の人を危険にさらしてまですることだったでしょうか。ただの「ジョイライド(楽しい乗車)」のように見えました。

 ちなみにお気づきだと思いますが(苦笑)、私はトランプ支持者ではありません。だから、どんなテーマでもトランプ氏に対して厳しい見方になることをお伝えしておきます。

トランプ氏を心底、信じる人たちがいる

スミス氏:私の専門は米国政治ではありませんが、専門家でなくても全ての米国人がはっきりと認識していることがあります。トランプ氏には、一定数の強力な支持者が存在するということです。

 トランプ氏はいつも正しくて、いわゆる伝統的な政治家たちを蹴散らして、支持者の声をワシントンに届けてくれる改革者──。そう固く信じている人たちが、2割とかではなく、半数近くいるのです。もちろん、全ての支持者がテレビに映っているような強力な支持者ではありませんが、それでも相当の数がいます。

 ここで疑問が浮かび上がります。COVID-19(新型コロナ感染症)になったことでトランプ氏は、「コロナに打ち勝った」「私は強い」と見せつけられるかどうか。それが追い風となるのかということです。

 明らかに選挙戦でトランプ氏を支援する人たちにとっては、これを追い風として世論をそちらに向けたいことでしょう。

 私はトランプ氏のファンではないので、トランプ氏が新型コロナと真剣に向き合ってこなかったから彼自身も感染した。「ほら、私たちが言っていたことは正しかったでしょう?」と言いたいと思っています。

 でも、彼の熱烈な支持者から見れば、私と同じように受け取らない可能性がある。今回のことが(熱狂的な支持者ではない人に)どれくらいの影響を及ぼすかまでは正直、現時点ではっきりしたことは言えません。

 ただ、彼自身の感染で、選挙結果がより予測しづらい状況になったのは確かだと思います。

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