「もしトランプが再選したら」──。米国の現代政治を研究する上智大学の前嶋和弘教授がみる「もしトラ」とは。

これまでの記事と今後の主な予定
・「中国にとって好ましいのはトランプ氏勝利」笹川平和財団・渡部氏
・パックン「イラク戦争を始めたあのブッシュですら恋しくなる」
・石破茂氏「トランプ氏の“サスペンス”に乗ってはならない」

・シーラ・スミス(米外交問題評議会日本担当シニアフェロー)

<span class="fontBold">前嶋和弘(まえしま・かずひろ)</span><br> 上智大学教授。専門は現代アメリカ政治外交。静岡県生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒、米ジョージタウン大学大学院政治学部修士課程修了、米メリーランド大学大学院政治学部博士課程修了。主な著作は『アメリカ政治とメディア』(北樹出版、2010年)、『危機のアメリカ「選挙デモクラシー」』(共編著、東信堂、2020年)、『現代アメリカ政治とメディア』(共編著、東洋経済新報社、2019年)、『Internet Election Campaigns in the United States, Japan, South Korea, and Taiwan 』(共編著、パラグレイブ・マクミラン、2017)など
前嶋和弘(まえしま・かずひろ)
上智大学教授。専門は現代アメリカ政治外交。静岡県生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒、米ジョージタウン大学大学院政治学部修士課程修了、米メリーランド大学大学院政治学部博士課程修了。主な著作は『アメリカ政治とメディア』(北樹出版、2010年)、『危機のアメリカ「選挙デモクラシー」』(共編著、東信堂、2020年)、『現代アメリカ政治とメディア』(共編著、東洋経済新報社、2019年)、『Internet Election Campaigns in the United States, Japan, South Korea, and Taiwan 』(共編著、パラグレイブ・マクミラン、2017)など

トランプ大統領が新型コロナウイルスの感染を表明。入院4日で退院するなど連日事態が急変しています。

前嶋和弘教授(以下、前嶋氏):「オクトーバー・サプライズ」とはよく言いますが、選挙までの1カ月で大きく世論は動きそうです。

4年前の前回米大統領選挙でも、ヒラリー・クリントン候補が優勢と伝えられていた中で、大逆転となりました。

前嶋氏:ヒラリー⽒はオバマ政権の国務⻑官時代に、政府の公式メールアドレスではなく、個⼈のメールアドレスを使っていた「私的メール」が16年10月末に再びFBIの捜査の対象となり、失速して⼤逆転を許しました。

 トランプ氏の新型コロナ感染と早期の退院がどう影響するか。感染が判明した後の世論調査ではバイデン氏の支持率が上昇しましたが、まだ分かりません。トランプ氏は自身を強いリーダーとして誇示することで米国民にアピールするでしょう。

トランプ氏が入院したウォルター・リード軍医療センターに集まった支持者たち(写真:AFP/アフロ)
トランプ氏が入院したウォルター・リード軍医療センターに集まった支持者たち(写真:AFP/アフロ)

トランプ政権の4年間をどう見ますか。

前嶋氏:トランプ氏は自身の支持者を固めて逃さなかった。還元をずっとしてきたからです。ただ、あくまで自身の支持者にのみ還元してきた。

米国全体への還元ではない、と。

前嶋氏:そうです。彼には大きく3つの支持層がある。共和党が掲げる「小さな政府」支持者にキリスト教保守層、そして怒れる白人です。連邦最高裁判事に保守系のエイミー・バレット氏を指名すると発表しました。これが承認されるとリベラル派が3人に対して保守派が6人と大きくバランスが崩れます。同性婚は違憲になる可能性がある。

 2017年にトランプ氏がエルサレムをイスラエルの首都と認定すると表明し、そこに米国大使館を移しました。イスラエルがアラブ首長国連邦(UAE)やバーレーンと国交正常化した際にも「福音派が喜ぶ」と語った。それこそ、彼の支持層であるキリスト教福音派に対しての「還元」なのです。

 白人の労働者に対しては対中貿易戦争をはじめ、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる貿易協定である米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を発効させるなど、徹底して自身の支持者に向けた施策を実行してきた。

一方、自身の支持者への還元で、米国は大きく分断されてしまいました。

前嶋氏:米調査会社ギャラップによると8月末から実施した調査ではトランプ氏の支持率は42%でした。ただ、内訳をみると景色は一変します。共和党支持者からの支持率は92%に上り、民主党支持者からのそれはわずか4%。88ポイントもの差がある。

 議会も大きく割れています。米国では日本と異なり、党議拘束はありません。なので、党に所属していても自分の意思で投票できる。ただ、そんな自由な環境下でありながらも、9割以上が党の方針通りの支持をしている。これだけの分断があった過去は、南北戦争時代までさかのぼります。

160年ぶり。日本だと幕末ですね。

前嶋氏:トランプ大統領の支持層からすれば、自分たちの願いをかなえてくれるので夢の時代ですね。一方、リベラル派からすると暗黒時代。天国と地獄が共存しているのが今の米国です。

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