全国各地で「学生詐欺師」たちの逮捕が相次ぐ。具体的な規模は定かではないものの、学生の間で詐欺行為がここまでまん延したことは過去になかったのではないか。若者たちが無自覚なまま悪の道に入るのを防がねばならない。親の世代は重い課題を突きつけられた。

持続化給付金を詐取した容疑で大学生の逮捕が相次ぐ(写真はイメージ、写真:PIXTA)

 今回、地方大学の学生、田中憲三郎氏(仮名)が取材に応じ、「詐欺を働いてしまった」とざんげしてくれた。彼の話からは、知人の紹介を繰り返すことにより、各地の大学で詐欺ネットワークがねずみ算式に膨張した実態が浮かび上がってきた。

 田中氏が友人の紹介で、同じ大学に通う黒河彩花氏(仮名)と対面したのは6月だという。

女子学生に誘われ悪の道へ

 「個人事業主のフリをするだけで、簡単に大金が手に入るんだけど、興味ない? 弁護士や税理士からなる『業者』が私のバックについているから大丈夫。警察OBも仲間にいるから安心してね」

 獲得するのは持続化給付金だという。本来は、新型コロナウイルスの影響で収入が激減した個人事業主や中小企業を救済するために、政府が5月に運用を始めた制度だ。個人事業主の場合、最大100万円を受け取れる。本当に警察OBらがバックについているかは不明だったが、田中氏は「大金が手に入る」との誘いを断れなかった。

 「やるよ。詳しく教えて」

 こうして学生詐欺師がまた一人増えた。

 田中氏は黒河氏に指南されるがまま、「イベント・コンサルタント業」を営んでいると偽る書類を作成し、100万円の詐取に成功。

 国は個人事業主を速やかに救済するために、あえて審査の手続きを簡略化しており、その裏をかく形で各地で多くの学生が給付金に群がった。

 田中氏は事前の取り決め通り30万円を自らの懐に収めて、70万円を黒河氏に渡した。黒河氏はそのうち30万を紹介料として抜き取り、残り40万円を業者に分配した。

逮捕者が出たとの報道をきっかけに

 「お前、持続化給付金を手にしたんだってな」
 田中氏が同級生、赤西慎太郎氏(仮名)から声をかけられたのは8月のこと。

 「何で知っているんだ?」
 「黒河から聞いたんだ。ほかにも給付金を手にしたいやつがお前の周りにいたら、紹介してくれない?」

 聞けば赤西氏は黒河氏とは別のグループの一員として、給付金詐欺の仲間を募っていた。1件当たり数十万円の紹介料を受け取れるとの好条件に引かれ、田中氏は友人3人を赤西氏に引き合わせた。

 雪だるま式に急増した学生詐欺師たちが突如として退潮に転じたのは、8〜9月ごろからである。給付金をだまし取った詐欺容疑で逮捕者が出たとの報道が相次ぐようになったことがきっかけだ。

続きを読む 2/2 各地で学生詐欺師たちの手じまいが進む

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