2020年初めから、日本を襲ったコロナ禍は、経済や文化に様々な影響をもたらした。代表格は、少なからぬ人々の「日常的な行動範囲を狭めたこと」だろう。
とりわけ首都圏では、コロナ対策に伴うテレワークの常態化によって、都心への通勤者が着実に減少。郊外ではD氏のような“エリア限定型の暮らし”を送る人も増えた。各種データを見ても、その多くが今も、D氏のように前向きに受け止めているかどうかはともかく、「都心に行かない生活」を続けていることが見て取れる。
例えば、位置情報サービスを手掛けるAgoop(東京・渋谷)によると、東京、新宿、渋谷、新橋の4つの都心主要駅周辺(半径500m圏内)エリア内に平日滞在する人は、新型コロナウイルス感染拡大前と比べ、いまだに30~50%減ったままだ。9月16日の場合、東京駅周辺は40.8%減、新宿は30%減、渋谷は30.5%減、新橋は50.7%減となっている。
100万人近い人の移動が停滞中?
Agoopの柴山和久社長は「データから推察する限り、それまで平日、郊外から都心へ来ていた人の少なくとも3割が今も移動を控えていると考えられる」と話す。
東京23区に周辺部から集まる人は、コロナ禍以前は280万人程度とされ、その3割となると100万人近い人の移動が滞っていてもおかしくないという話になる。その中には授業がオンラインになった学生なども含まれるが、中核となるのはやはりテレワークに移行した会社員だ。

こうして、首都圏の中でも企業の拠点が集積する「ビジネスエリア」に行く人が減れば、住宅地中心の「居住エリア」に昼間からいる人が増えることになる。例えば、三鷹駅周辺エリアの平日午後1時の人出は、感染拡大前の平均6000人前後から今は約6割増、1万人を超える日もあるほどだ。埼玉の浦和駅エリアや、千葉の浦安エリアなども同じ傾向にあり、「明らかに在宅勤務などによって、家が仕事場になり、地元で過ごす人が増えたことを裏付けるデータ」と柴山社長は説明する。
こうした居住エリア、ビジネスエリア間の「100万人規模の移動の停滞」は既に、双方のエリアに様々な経済的影響を与え始めている。
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