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 「今年3月以降、自宅から2km圏内のエリアをほぼ出ないで生活している。外に出たのは両手で数えられるくらい」。東京・丸の内の金融機関に勤めるD氏はこう話す。

 2月までは、川崎市の自宅から小田急線で片道1時間かけて毎日通勤していた。働き方改革の一環として始まった早朝会議に間に合わせるため、朝食もほどほどにラッシュアワーの電車に乗る。その分、早く帰宅できるわけでもなく、数時間の残業の後、職場の同僚らと飲みに行くこともしばしば。平日は、むしろ「自宅2km圏内」にいるのは寝るときだけという生活だった。

 休日はどうかと言えばこれまたあまり変わらない。都心や大型店の方が安く買えるし品ぞろえも豊富だと思い、ついついまた電車や車を使って都心近くまで遠征してしまう。そんな休日だった。

(写真はイメージ、PIXTA)

快適だった“多摩川を越えない生活”

 コロナ禍で生活は一変した。3月から在宅勤務が導入されると、顧客との打ち合わせも、社内のミーティングも原則オンラインに切り替わり、海外の拠点とのミーティングもほぼ自宅でこなすようになった。世間の外出自粛ムードもあって、週末の遠出もなくなった。

 退屈するかに思えた“多摩川を越えない超小圏生活”。だが蓋を開けてみると、「思いもよらず快適なものだった」とD氏は語る。

 まず、あの不快で苦痛な通勤時間がない。職場の同僚に気を使いながらの残業も上意下達の会議も、気の進まぬ飲み会も消えた。思わず仕事をしすぎてしまうほど、効率性は向上。気持ちが前向きになり、新しいアイデアも湧く。仕事への拘束時間が減った結果、それまではさぼり気味だった筋トレも日課となり、体調もすこぶる良い。

 休日の買い物も今ではネット通販で全く支障がない。趣味用品も、海外の通販サイトなどを活用すれば、日本の大型商業施設で買うよりはるかに安く良質な商品が手に入ることを今さらながら実感した。近所を散策すると、長年住んでいながら気づかなかった歴史的名所や観光資源が点在することにも気づく。そして何より家族と話す機会が増えた。子どもの勉強を見てあげることと、自宅から子どもの学習塾への送迎が新たに家庭内ミッションに加わった。