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コロナ禍であらためて明らかになったことの1つが、日本の「デジタル後進国」ぶりだ。押印のための出勤など、デジタル化を真剣に進めていれば、容易に解決できた問題も多い。一方、日本に隣接する台湾はデジタル技術を効果的に活用し、新型コロナの感染拡大を抑え込んでいる。台湾のデジタル化を進めてきたのが、IT担当大臣のオードリー・タン氏である。

タン氏は中学を中退し15歳で起業。米アップルの顧問も務め、史上最年少で台湾の閣僚に就いた。IT担当大臣として、新型コロナ対策やマイノリティーが生きやすい社会を模索する。監視ではなく自由と平等のためにデジタル技術はあると説く。

オードリー ・タン[唐鳳、Audrey Tang]氏
1981年台湾生まれ。幼少期からコンピューターに興味を持ち、インターネットの登場とともに独学でプログラミング言語を勉強。14歳で中学を中退し、15歳で起業。その後米シリコンバレーに渡る。プログラミング言語「Perl」(パール)開発への貢献で世界から注目される。2014年の「ヒマワリ学生運動」への支援を機に公共問題に関心を持つ。16年、蔡英文政権の行政院の政務委員(閣僚)に35歳という史上最年少で登用される。部門を超え、行政や政治のデジタル化を主導する。(写真=賴 光煜)

デジタル技術を用いた台湾の新型コロナウイルス対策が注目されています。成功の要因は何だったのでしょうか。

 3つの観点において、デジタルの力が貢献したと考えています。全てアルファベットの頭文字「F」から成る「Fast(速さ)」「Fair(公平さ)」「Fun(楽しさ)」です。

 まず「速さ」。中国・武漢からの入境者に対する検疫体制を強化した時期が他国よりも早かったのは、台湾のインターネット掲示板に武漢の医師が(新型肺炎が流行していると)注意喚起しているとの情報が投稿されたからです。それを疾病管制署の職員が調査し、信ぴょう性が高いと判断した時点で、検疫強化に踏み切りました。

 また、マスクを台湾の人々に公平に行き渡らせることができたのは、市民ハッカーらが発明したテクノロジーによるものでした。彼らが生み出した100を超えるツールのおかげで、マスクの供給体制が可視化されるとともに、政府の健康保険カードを利用したマスクの購入実績管理システムを正常に動かすことができました。

 そして、根拠のない噂やデマがSNSなどを通じて広がった時は、ユーモアの力でデマを封じ込めるアイデアを実践しています。即席麺が買えなくなるというデマが流れた時は、数時間以内に蘇貞昌行政院長(日本の首相に相当)をモデルにし、「台湾には十分な量のインスタント麺があります。でも、健康のために野菜も一緒に食べましょう」というキャッチフレーズを入れたコミカルなイラストをSNSに流しました。面白い情報はすぐに拡散しますので、デマは数日でトーンダウンしてしまいます。

デマを封じ込めるべく、コミカルなポスターを作成しSNSを通じて拡散させる

 デジタルによって「3つのF」を実現したことで、台湾は新型コロナの感染拡大およびそれに伴う社会不安をうまくコントロールできています。

デジタルで新たな基盤つくる

こうした成果は、コロナ以前からさまざまな分野でデジタル化に注力してきたからこそ、もたらされたものなのでしょうか。