新型コロナウイルスの感染拡大の結果、在宅勤務によるテレワークが当たり前になり、様々な局面で接触を減らす努力がなされるようになった。変化を余儀なくされる中で浮かび上がってきたのは、デジタルを使いこなせていない日本の姿だ。押印のための出勤など、デジタル化を真剣に進めていれば、容易に解決できた問題も多い。多くの日本企業も、コロナ禍を契機にデジタル化をもう一歩進めようとしている。セゾン情報システムズは決算業務の時期をコロナ禍が直撃する中、リモートで業務を進め、予定通りの発表にこぎ着けた。

【この連載のこれまでのラインアップ】
第1回 花王が挑む「FAX一掃作戦」、コロナ特需で電子化は逆行
第2回 加速する三井物産の印鑑レス、それでも残る「岩盤」

(写真:PIXTA)
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 コロナ禍は3月に事業年度末となる企業の決算業務を直撃した。日本経済新聞によると2020年3月期決算で3割弱の企業が当初の予定から発表を遅らせた。新型コロナウイルスの感染拡大でロックダウンした海外拠点の情報入手が遅延したほか、在宅勤務を強いられ、決算業務が思うように進まなかったためだ。

 そんな中、東京証券取引所JASDAQ上場のセゾン情報システムズは、経理部門が在宅で作業を完結する「リモート決算」で乗り切った。紙や手作業が多く残る代表格とされる経理部門のデジタル化を実現した秘訣は、「システム間連携」と「ワークフローの可視化」だった。

 「経理部門も例外じゃない」

 社長の厳命に、セゾン情報システムズの鷲尾武・財務経理チーム長は頭を悩ませていた。2017年、同社はオフィス移転に伴い、個人の席をなくす「フリーアドレス」を導入することとなった。しかし決算時の経理部門は、紙の請求書や領収書と格闘しながら、残業を続けてなんとか間に合わせるのが当たり前。働き方改革から最も遠い部署で、「最初に言われたときは無理だろうと思った」と振り返る。

 経理にまつわるITシステムが整備されていないわけではない。14年にクラウド型経費精算システム「SAP Concur」を導入したほか、給与計算の「給与奉行」、売り上げなど販売の数字を管理する「Salesforce(セールスフォース)」など、各部門が様々なソフトウエアを使っていた。

 「減損会計や税金関連など複雑なところを除けば、各部門のITシステムから流れてくるデータを集約して、決算の数字はかなりの部分ができあがる」(鷲尾氏)。だからこそ、他部署から「なぜ経理は手作業と紙がそんなにたくさん残っているのか」と不思議がられる。

紙を使った数字の照合に追われる

 紙と印鑑を使って作業していたのは「数字の照合」だ。

 例えば給与計算。給与計算システムから各社員の給料データを人事部が引き出す。微調整を行い、加工したデータを経理部門に送る。経理部門は、会計管理システムにデータを移し替えたうえで、給与計算システムで数字を印刷して、会計管理システムとの数字のずれがないか照合する。

 業務ごとに独立したITシステムの数字と会計管理システムの数字を照合する作業が、売掛金、固定資産、買掛金、引当金、前受金など勘定科目ごとに必要になる。さらに銀行から取り寄せた残高証明書と相違がないかも確認。照合の「チェックリスト」は月175件、四半期で400件超に上った。

 さらにやっかいなのが、この照合作業の進捗管理だ。担当者と検証者が書類に印鑑を押して完了を確認する仕組みだった。Excelや場合によってはホワイトボードに完了したタスクを書き込み、経理部門で進捗を共有していた。

 日々の財務データを分析し、経営判断に役立つ助言をする──。そんな働き方を想像していた若手社員が、「データの照合とシステムエラーのチェックばかり」と愚痴をこぼす。どの企業の経理部門も経験する一幕だ。

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