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 新型コロナウイルスの感染拡大を機に、在宅勤務の普及や人事評価において「時間管理型」からの脱却が加速している。新型コロナ以前から独特の働き方や風土を模索してきた組織は、こうした働き方改革の波をどのように捉えているのか。

 コロナ禍前から在宅勤務制度を導入するなど、独特の働き方を打ち出してきたサイボウズの青野慶久社長と、調査機関GPTWの「働きがいのある会社」ランキング(従業員100~999人部門)で3年連続1位を獲得している出張・経費管理クラウドサービスを手掛けるコンカー(東京・中央)の三村真宗社長が対談した。

サイボウズの青野社長(左)とコンカーの三村社長(右)

新型コロナの感染拡大を受けた緊急事態宣言が解除されてから既に4カ月ほどたちました。今はどのような働き方をしていますか。

コンカー・三村真宗社長(以下、三村氏):私は今回の新型コロナまでは在宅勤務に極めて慎重でした。以前、『最高の働きがいの創り方』(技術評論社)といった本も執筆したのですが、在宅勤務は非常に慎重に運用しているということを書いていたのです。

 もともと慎重だったというのは、在宅勤務にするとコミュニケーションに問題が生じると感じていたのです。以前も未就学児のいる社員に対しては在宅勤務を個別に許可していましたが、基本的にみんながオフィスで面と向かってミーティングをしている中で1人だけ電話の向こう側にいると、どうしても疎外されるというか、議論に入りにくい状況があったのです。出社している側からも不安の声がありました。あとは業務のスピード感がどうしても上がらなかったですね。

 それから、社員の生産性を高めるには社員間のエンゲージメントや絆といった一体感が必要です。社員が一体感を持つには、オフィスでみんなが座っていることが前提だという思い込みもありました。

 でも、実際、新型コロナになって一斉に在宅勤務になったら、コミュニケーションはそれほど劣化することもなく、以前のような在宅勤務と出社が混在している環境よりはよっぽどうまく仕事が回りました。一斉に在宅勤務になることで、リモートで働くためのマナーのようなものも誰もが急速に習得して、コミュニケーションの問題はほとんど感じなかったのです。

 緊急事態宣言が明けて出社しても問題ないという会社が増えていますが、コロナ禍が落ち着いたとしても我々は在宅か出社かは、基本社員の判断に委ねています。今は、出社率は5~8%ほどです。

在宅・出勤混在は、働きにくかった

サイボウズ・青野慶久社長(以下、青野氏):私たちもほとんど同じです。10年ほど前からテレワーク制度を導入していたので、もともと、完全に在宅勤務をしている社員も存在しました。ただ、今回、「全員在宅勤務」にしたことで、気付きがありました。混在している方が面倒くさいということです。

 僕は「昭和の人間」なので、実際に社員を集めてホワイトボードの前に立つなどして考えを伝えることが好きなんですよね。もちろん、以前から在宅勤務は大歓迎だったので、リモートでつなぐ人もいました。ただ、声が聞き取りにくい、空気感を読みにくいという課題がありました。今回一斉に在宅勤務になって、「青野さん、申し上げにくいのですがテレワークがとてもやりやすくなりました」との声をもらいました。足を引っ張っていたのは僕自身だったのです。

 先ほど三村社長が「マナー」ということもおっしゃっていましたけど、みんな、どんどん技を見いだしていますよね。画面の共有や切り替えだったり、背景画像の設定の仕方だったり。1カ所に集まらないと伝えにくいこともあると思っていましたが、むしろバーチャルにすることで、より一層伝えやすくなることもあるのかなと思っています。

 私たちも原則在宅勤務で、出社したければどうぞという形にしていますが、出社率は1割いかないです。通信環境や騒音の問題などでオフィスに来ている人はいますが、その程度です。ですので、この先、オフィスをどうしようかなと考えています。

三村氏:私たちも、約300人を収容できるオフィスが、来年にはもう手狭になるねという話をしていたのですが、今は出社しているのは20人くらい。オフィスって何だったのだろうと本当に思います。契約があるので、すぐにどうこうというわけではないですが。フリーアドレスで運用することを想定すると、必要なオフィスの広さも一気に変わってくるとは思っています。