
仕事が分かれていないから長時間労働になる
日本の労働者は長時間労働が珍しくなく、海外に比べて生産性が低いといわれるのはなぜでしょうか。
太田肇同志社大学教授(以下、太田氏):日本企業は今まで、働く人がその組織や集団に溶け込み、組織と個人が未分化なことが特徴でした。そのような組織構造では、個々の仕事の分担がはっきりしなくなります。周囲との相互依存関係が必要以上に強くなり、理不尽な要求や不公平な評価が生じやすい。部下が上司に対し、仕事上の役割の範囲を超えて従属する関係ができてしまうのです。

1954年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。京都大学経済学博士。公務員を経験した後、2004年同志社大学政策学部教授。専門は組織論。
この構造は、2つの側面から負の面が見えてきています。1つは働き方改革。「自分の仕事はどこまでか」という線引きが明確でないから、本来は出なくていい無駄な会議が増えたり、他人のペースで仕事をすることになり残業が増えたりします。
もう1つは生産性の向上や新規事業の創出の足かせになることです。かつての少品種大量生産時代は、会社と個人が未分化であることを生かせました。決まった仕事をいかに正確に、迅速にこなすかが重視されたからです。しかし、クリエーティブな能力が必要な時代では、それはネックになる。
アイデアは自分の頭の中で湧いてくるものであり、組織やチームに溶け込ませると、周りが喜ぶものになっていってしまうからです。モチベーションにも関係します。自分の仕事だと思えば、突出したことをして、目立ちたいという気持ちが湧きます。名前が出ると思うと名誉にかけてやりますよね。
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