これまで、富士通キリンホールディングスカルビーの事例を中心に、各社が「ジョブ型」「在宅勤務最優先」「単身赴任なし」にかじを切った意思決定の背景を考察してきた。連載第4回は、経営トップにニューノーマル(新常態)の働き方に転換する理由をインタビューで語ってもらう。

 話を聞いたのは、事務機大手リコーの山下良則社長だ。山下氏は2020年4月、自らCHRO(最高人事責任者)を兼務している。

 2017年4月の社長就任時に「働き方変革」を経営目標の1つに掲げ、在宅勤務制度も徐々に整えてきた。8月19日には、期限を定めずに出社率を30%または50%以下に抑え、在宅勤務などのリモートワークを標準化する方針を発表した。職種別に目安となる数値を設定し、各社員がそれぞれの仕事に最適な働き方を考案する。

 山下氏に、コロナ禍を経て、働き方はどうあるべきなのか、現状と将来像を聞いた。

自らも在宅勤務を活用するリコーの山下良則社長

在宅かどうかは「どっちでもいい」

リコーは3月から在宅勤務を開始し、7月末に期限を決めず、職種別に「50%以下」「30%」という出社率の基準を定めました。出社は必須でないと判断したのですか。

山下良則・リコー社長CHRO(以下、山下氏):出社するかどうかは職種にもよるし、大きく言うと(働き方の)方法論の問題。だから本来は、まあ、どっちでもいいんじゃないかと思っています。でも、今はまだ新型コロナウイルスの感染が収束していないので、社員の安全や健康に配慮するという意味で、出社率をある程度設定するようにしました。

 “ウィズコロナ”の状況は長引きます。これがニューノーマル(新常態)と考えれば、小手先、表面的な対応では乗り切れない。事業的にもそうですし、本来の働く人にとっての達成感とか、自己実現とか、そういう視点でも新しい方向に行かないといけないと思っています。

CHRO(最高人事責任者)を4月から兼務しているのも、ウィズコロナの状況が関係していますか。

山下氏:この会社は2036年に100歳になります。次の100年を担保するために、事業ポートフォリオはプリンティング(印刷)からデジタルサービス業に移行すると宣言しました。それに沿って、働く人が自律型の人材にもっとシフトしないといけないという課題があります。

 そのために、働く人たちがどのようなときに達成感や喜び、幸せを感じるかを、もっと真剣に突き詰めて経営していかないとだめだと思いました。2017年に社長になったとき、「働き方変革」をやると社内で打ち出したのですが、それは別に、在宅勤務をすることだけじゃないんですよ。

 方法論として、在宅勤務を含めた幅広いマルチな働き方という選択肢を上手に使って、達成感や自己成長につなげる。自分が社会の役に立っているか感じられることが、働く人にとっての働きがいになるからです。働く人がやりがいを持って、働くことに喜びを感じられるカルチャーをつくる。そのための1つの手段が、在宅勤務やサテライトオフィスで働くことができる環境づくりだと、僕自身は位置付けています。

 一方、プリンティングの会社のビジネスモデルとデジタルサービスの会社のビジネスモデルはずいぶん違う。会社を支え伸ばしていく社員が自ら変わっていかないといけないけれど、変われ、変われと社員に言うよりは、ロールモデルをつくり、変わりやすい環境をつくり、評価のやり方もそれにふさわしいものに変えていかないといけない。それは、社長自らやるべきだろうと思い、CHROを兼務しています。

続きを読む 2/4 3カ月で社長の出社は4日

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