新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的に、多くの企業で強制的に在宅勤務が広まった。働く場所を会社に限定しないテレワークは、定められた仕事をこなせるかどうかのスキルがより重視される「ジョブ型」雇用への転換を多くの企業で加速させている。

 戦後の復興と高度経済成長期を経て確立した年功序列や終身雇用などをベースとした、いわゆる「日本型雇用」が、根底から揺さぶられる事態となった。その変化によって訪れる働き方のニューノーマル(新常態)は、企業、そして個人にとって天国か地獄か。希望や不安を抱くビジネスパーソンは少なくないはず。

 本連載では、企業の動きや専門家の意見、ビジネスパーソンへの独自アンケートの結果などを紹介していく。第2回は、出社者数の上限を3割とし、原則在宅勤務を打ち出したキリンホールディングス。コロナ後も、その方針を続けるという。なぜ、「仕事は家で」を前提とする働き方にかじを切ったのか。

(写真:ロイター=共同)

 物流や製造部門を除く国内のグループ社員約1万人のうち、出社者数の上限を原則3割と定めているキリンホールディングス。新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、当初、この「出社3割」原則は、6月末までの実施を計画していた。だが、現在も期限を設けずにその原則を維持している。今後についても「原則的に勤務場所は自宅が最優先候補となる」。人事を担当する三好敏也取締役はそう話す。

 7月から、社内の会議や研修のための出張は原則オンライン会議ツールを活用する方針を定めるなど、出社をしなくていい環境づくりに力を注ぐ。自宅、職場に次ぐ働く場所の「サードプレイス」(第3の場所)として、シェアオフィスの利用も7月から試験的にスタート。会社がシェアオフィス事業者と契約し、首都圏で約110拠点を用意した。

働く場所は自宅が「ファーストプレイス」

 自宅を「ファーストプレイス」とする新たな働き方は、キリンの社員に定着してきているようだ。現在の社員の出社率は10~15%にとどまり、シェアオフィスも首都圏勤務の対象社員の約1割にあたる約350人が7月の1カ月間で利用した。アンケートを実施したところ、自宅では仕事に集中しにくいと在宅勤務に不満を抱えていた社員からも、「プライベートの時間と区別しやすくなった」「集中できる就業環境で業務できた」などの声が寄せられている。

110拠点を設け、「サードプレイス」としての利用を進めている。

 なぜ今、キリンHDは働く場所として「自宅を最優先」に選ぼうとしているのか。将来的に、現在「3割」としている出社上限が変わる可能性はあるが、「自宅最優先」の方針は恐らく変わることはなさそうだ。

キリンホールディングスで人事を担当する三好敏也取締役

 三好取締役は、働く場所のファーストプレイスを自宅にする理由を、こう説明する。

 「“アフター”コロナという状況ではなく、“ウィズ”コロナという時代に変わりはない。そのため、感染リスクをなるべく減らしたい」

 「『出社しないで仕事を回すにはどうしたらいいか』という課題に直面したことで、これまでの固定観念を崩す働き方のアイデアが出始めている。『出社3割』という制限を解除することで、せっかくのアイデアを実現しないまま、元の働き方に戻ってしまうことを避けたかった」

続きを読む 2/3 「固定観念を覆す」働き方を社員に求める

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