新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けたのはスタートアップ企業も同じだ。市場環境は大きく変わり、資金調達も難しくなった。しかし今の逆境は、若く強い次世代の経営者を生み出すきっかけにもなる。現在23歳、最年少での上場を目標に掲げてきたタイミーの小川社長は、「コロナのおかげで自分も組織も強くなった」と前を向く。

これまでの連載
・コロナ治療薬で活躍のスパコン富岳 「2番じゃダメ?」への答え
・教育IT化の佐賀県、子育ての流山市……地方「脱金太郎飴」の道
・売上高4割減でも黒字に 「塚田農場」が挑む会社作り直し

 「史上最年少上場を目指しています」。

 2019年夏、大人びた雰囲気とあどけない笑顔とのギャップを併せ持つ22歳(当時)の経営者は臆することなくこう語った。

 面接なしで働きたい人と働いてほしい店舗側をマッチングする「Timee」を提供するタイミー(東京・豊島)の小川嶺社長(23)。たった1年前、飲食業界はインバウンド需要に沸き、恒常的な人手不足に陥っていた。

タイミーの小川嶺社長(撮影:稲垣 純也)

 タイミーはこうした時勢に乗り、急成長を続けていた。19年1月には約3億円を調達、同年10月には約20億円を再度調達した。

 飲食店が繁忙期になる19年11月には人気女優の橋本環奈さんを起用したテレビCMを放映。Timeeの利用者を一気に拡大することにも成功した。

 史上最年少上場の記録は成功報酬型の求人サイトを運営していたリブセンス村上太一社長が2011年に打ち立てた25歳1カ月。9年間破られていないこの記録に挑戦する資格を小川社長は十分に持ち合わせていた。

 新型コロナウイルスの猛威に同社が襲われたのは、こうしたさなかだった。タイミーは売り上げ構成比の8割を飲食店に頼っていた。「相当しんどかった」。小川社長はこの半年間の悪夢をこう振り返る。

 街を歩けば、1年前には想像もできなかった静寂が飲食店を覆っていた。一瞬、自信を失いかけた。

元の世界には戻らない

 「コロナ前の世界はもうない。世界は変わってしまった」

 小川社長は社員にこう伝えた。伝えると同時に、コロナと真っ向から向き合う覚悟を決めた。

 人手不足が顕在化した物流や小売りへと焦点を定め、取引先の開拓にひた走った。そして、売り上げを昨年11月時点まで一気に戻した。

 「コロナのおかげで自分も組織も強くなった」(小川社長)。現在は、幅広い業種に取引先を広げ、リスクに強いポートフォリオ経営体制を短期間でつくり上げた。

 最年少上場のスケジュールも変更していない。景気悪化を嘆き、下を向く経営者が多い中、コロナ禍は若く、強い経営者を生み出す源泉となっている側面がある。

 起業家を支えるエコシステム(生態系)が整えられ、若い起業家は一気に増えた。だが、日本全国で見れば、経営者の高齢化は進んでいる。帝国データバンクが2020年1月時点の約95万社を調査したところ、社長の平均年齢は59.9歳。1990年から約30年間、一度も若返ることなく右肩上がりを続けている。

 くしくも日本経済が停滞し続けた「失われた30年」とかぶる。暗中模索を続けてきた先で、新型コロナという未曽有の脅威がまたもや襲いかかる悲運。だが、これに異を唱える若き経営者もいる。コロナ禍で70億円以上の資金を調達し、攻めの姿勢を見せたヘイ(東京・渋谷)の佐藤裕介社長だ。

続きを読む 2/2 「先人の選択」が残したもの

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り986文字 / 全文2750文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「再興ニッポン 敗れざる者たち」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。