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 「コロナ禍が、廃業を考えていた経営者の背中を押している」。中小企業向けにM&A(合併・買収)仲介を20年以上手掛けてきたストライクの荒井邦彦社長はこう話す。

 コロナ禍で景気の先行きが不透明になり、事業譲渡を考える経営者は少なくない。だが事業譲渡という発想にたどり着く経営者はごく少数。自分の会社の企業価値や社会における影響力をきちんと把握していないがゆえに、廃業を選ぶ経営者がほとんどだという。

荒井邦彦(あらい・くにひこ)氏
1970年千葉県生まれ。一橋大学商学部卒。93年太田昭和監査法人(現新日本監査法人)入社。財務デューディリジェンス、株式公開の支援などの業務を経験。97年中小企業のM&A仲介を手掛ける株式会社ストライクを設立。16年6月東証マザーズ上場。17年東証1部に市場変更。

コロナ禍で会社を畳もうとする中小企業経営者は増えているのでしょうか。

荒井邦彦氏(以下荒井氏):「いつかは廃業」と考えていた人の背中を押すきっかけにはなっていると思います。

 自分の会社の行く末をどうするかという問題は、いずれは考えなければならないものですが、自分が元気で会社も利益が出ているうちはどうしても後回しにしてしまいます。しかし、新型コロナの感染拡大でその状況は変わりました。会社を清算しても財産が残るうちに、自分の意志で廃業した方が周りに迷惑をかけないと考える経営者が増えています。

 多くの会社の業績がこれから悪くなりそうだとなれば、このような動きが活発化するのは当然でしょう。経営者とて退職後の人生があります。自身が健康なうちに、第2の人生に必要なお金が手元にあるうちに、会社を畳もうと思うのは当然だと思います。

雇用を守る観点から譲渡を選ぶ

事業譲渡など、会社を売りたいという相談も増加していますか。

荒井氏:迷いなく廃業できる経営者は、まず、うちのようなところには相談に来ません(笑)。M&Aという言葉は昔に比べて浸透したとはいえ、まだM&Aを通じて第三者に事業を承継する経営者は少数派です。まだまだ、廃業を選ぶ経営者の方が多いのが現実でしょう。

 その一方で、顧客に迷惑をかける、自分が廃業すると地域が困る、従業員の雇用を何とか維持したい、といった悩みを抱えた方が相談に来るケースが増えています。とりわけ、雇用を守る観点から、誰かに譲渡したいという要望が目立ちます。

見通しが不透明な中でもM&Aの買い手がつくものなのでしょうか。