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 新型コロナショックを受けて、東南アジアの製造業が大きく変わりそうだ。この地域には日系製造業が数多く進出し、重層的なサプライチェーンを築いてきた。その地盤を揺るがすほどの変化の波が押し寄せている。これをうまく乗り越え、さらに新しい成長の機会に変えていくにはどうすればいいのか。東南アジアの製造業の分析などに強みを持つ戦略コンサルティング会社アーサー・ディ・リトルの専門家が日系企業を取り巻く状況や課題などについて分析し、全4回でリポートする。

コロナで激変、東南アジア製造業の未来:目次
第1回:逆境でも「撤退」の選択肢はない
第2回:タイ拠点は自立せよ、社会課題に勝機あり
第3回:ベトナムの台頭、フィリピンの岐路
第4回:インドネシアの新需要、新興勢力の勃興

 東南アジア最大の人口を抱えるインドネシア。新型コロナウイルスの感染者数は累計で15万人を超えており、足元でも感染の拡大に歯止めはかかっていない。現在も続く封鎖措置の影響で経済活動は甚大な影響を受けており、ジョコ大統領は新型コロナ対策と経済回復を優先するため、目玉政策として掲げていた首都移転計画を棚上げすることを迫られた。

インドネシアの首都ジャカルタにある市場。マスクの着用は徹底されているが感染拡大は続いている(写真:ロイター/アフロ)

 新型コロナ危機により、インドネシアに拠点を置く日系製造業も工場の稼働停止や日本人駐在員の退避など対策を取ることを余儀なくされた。しかし一方で、今回の危機をものともせず積極的に事業拡大の機会を探り続けているプレーヤーもいる。インドネシアで急成長を果たしてきたスタートアップ勢と中国、韓国勢だ。

 米ウーバー・テクノロジーズのアジア事業の元幹部らが2018年に立ち上げたインドネシアのスタートアップKargo Technologies(カーゴ・テクノロジーズ)は2020年4月、新型コロナ危機の渦中にあって米国や東南アジアの投資ファンドなどから3100万ドル(約32億8000万円)の資金を調達することに成功した。

 カーゴは米ウーバーの物流版とも言えるサービスを主力として急成長してきた。IT(情報技術)を活用し、モノを運んでほしい企業と運送会社や物流会社とを効率的にマッチングする。ネットワークに組み込まれているトラックは5万台に上る。足元では新型コロナに対応したサービスを展開しており、複数の慈善団体などと提携して病院の職員や患者に食事や医療物資を輸送している。