新型コロナショックを受けて、東南アジアの製造業が大きく変わりそうだ。この地域には日系製造業が数多く進出し、重層的なサプライチェーンを築いてきた。その地盤を揺るがすほどの変化の波が押し寄せている。これをうまく乗り越え、さらに新しい成長の機会に変えていくにはどうすればいいのか。東南アジアの製造業に強みを持つ戦略コンサルティング会社アーサー・ディ・リトルの専門家が日系企業を取り巻く状況や課題などについて分析し、全4回でリポートする。

コロナで激変、東南アジア製造業の未来:目次(予定)
第1回:逆境でも「撤退」の選択肢はない
第2回:タイ拠点は自立せよ、社会課題に勝機あり
第3回:ベトナムの台頭、フィリピンの岐路
第4回:インドネシアの新需要、新興勢力の勃興

 「VIP」という言葉をご存じだろうか。東南アジアの中でも人口規模が大きく、かつ経済成長のスピードが速い国として知られるベトナム(Vietnam)、インドネシア(Indonesia)、フィリピン(Philippines)の頭文字を取った造語だ。今回はこの3カ国のうちV(ベトナム)とP(フィリピン)に注目したい。

 インドネシアは約2億6000万人という域内最大の人口を抱えており、どちらかといえば内需に焦点を当てて進出する日系製造業が多い。一方、ベトナムとフィリピンは内需と外需(輸出)の双方に目配せできる国として、日系製造業から比較検討されることが多かった。人口規模(双方とも1億人前後)や経済成長のスピード(過去5年の平均で6%台)も似通っているため、しばしば同じ文脈で語られる。「進出するならベトナムか、あるいはフィリピンか」と、両国をてんびんにかけて検討したことのある企業は少なくないだろう。

 もっとも、足元で日系製造業をより強く引きつけているのは明らかにベトナムで、フィリピンは顧みられることが少なくなっている。これを象徴するのが、経済産業省がこのほど公募した「海外サプライチェーン多元化等支援事業」の採択案件数だ。7月に発表された30件の採択事業のうち、15件はベトナムを事業実施先として含んだものとなっており、フィリピンはわずか3件にとどまる。

 ではベトナムは今後とも日系製造業の「候補地レース」をリードし続けるのだろうか。フィリピンが浮上する目はあるのだろうか。結論を先取りして言えば、新型コロナ危機の到来によりベトナムに注目する向きは一層強まっているものの、ベトナム人気に拍車がかかればかかるほどフィリピンの魅力もまた大きくなるとみている。こう考える背景について、両国が置かれている現状を俯瞰(ふかん)しつつ説明したい。

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