新型コロナウイルス危機が世界中の企業を苦境に追い込んでいる。中でもグローバルに生産拠点を拡大させてきた製造業は、各国・地域で異なる感染状況や規制に対応せざるを得ず、難しいかじ取りを迫られている。

 日系製造業にとって特に関心の高い地域は東南アジアだろう。ここには多くの企業が進出し、重層的なサプライチェーンを築いてきた。いわば日系製造業にとって砦(とりで)とも言える地域だが、新型コロナはその地盤を大きく揺るがす。

 迫りくる変化の波をうまく乗り越え、さらに新しい成長の機会をつかむにはどうすればいいのか。その解を見いだすには、東南アジア全体の状況を把握しつつ、同時に各国の現場に分け入ってその実像を捉える必要がある。そこで東南アジアの製造業に強みを持つ戦略コンサルティング会社アーサー・ディ・リトルの専門家が、各国の製造業を取り巻く状況と日系製造業が抱える課題などについて分析し、全4回でリポートしていく。

コロナで激変、東南アジア製造業の未来:目次(予定)
第1回:逆境でも「撤退」の選択肢はない
第2回:「自立」は不可避、タイの社会課題に勝機あり
第3回:ベトナムの台頭、フィリピンの岐路
第4回:インドネシアの新需要、新興勢力の勃興

 新型コロナにより、日系企業の東南アジア事業は苦境に陥った。各国政府が感染拡大を抑え込むために実施したロックダウン(封鎖)の影響で部品の供給は滞り、従業員は出社できず、工場を稼働させることすらままならなくなった。本拠地である日本も危機に見舞われているため手厚い支援は望めない。四面楚歌(そか)の中、この地域から撤退することを検討し始めた日系企業もある。

 連載の第1回ではまずこの点について検討していきたい。日系製造業にとって東南アジアはもはや魅力的な場所ではなくなってしまったのだろうか。

 確かに事業継続がままならない企業にとって、撤退はやむを得ない選択肢かもしれない。ただ結論を先取りして言えば、既に一定期間、一定の規模で事業を展開している日系製造業にとって撤退は良い手とは言えない。腹を据えてコロナ危機に立ち向かえば、光明もまた見えてくるはずだ。

 こう考える根拠はいくつもある。

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