「やばい! 誰かに悪用される可能性もあるかもしれないと思うと、つらい」。東京都内に住む20代の女性はあるニュースを見て驚き、不安になった。

 そのニュースとは、婚活マッチングアプリ「Omiai」を運営するネットマーケティングから個人情報が漏洩したかもしれないというもの。同社は5月21日、外部の不正アクセスを受け、アプリ利用の登録時に必要な運転免許証や健康保険証などの画像データが流出した可能性があると発表した。2018年1月31日から21年4月20日の間に利用者から提供を受けた約171万件分のデータで、運転免許証、健康保険証の画像データが9割を占める。

 今回の情報漏洩について、ネットマーケティングは「一定のセキュリティー防御措置をとっていたが、管理者になりすました犯人が画像データを外部に流出させた可能性が高い」としている。現時点で情報が悪用されたケースはないが、同社はアプリ内の通知機能で利用者に注意喚起をしている。

「Omiai」は真剣に婚活をするユーザーが多数登録している
「Omiai」は真剣に婚活をするユーザーが多数登録している

 12年にサービスを開始したOmiaiは、SNS(交流サイト)のフェイスブックの認証システムとも連携している。それまでネット上での出会いといえば、素性の分からない人とやり取りする、いわゆる「出会い系サイト」が中心で、犯罪の温床になっているともいわれていた。法改正もあって09年からサービスを利用するには身分証の登録が必要となった。

 Omiaiでは身分証の登録はもちろん、フェイスブック認証の仕組みを取り入れることで、パートナー候補として選ばれる相手の信頼性、サービス全体の安全性を高めていた。日本ではSNS上の知り合いと出会うことを嫌う人も多いことから、SNSの友人同士が相手候補に表示されない仕組みも導入。冒頭のユーザーも「自分も相手も、身分が証明されていることがアプリを使う安心材料の1つになっていた」と話す。

参考記事:王者Tinderだけじゃない 日本で進化するマッチングアプリ

 エウレカ(東京・港)の運営する「Pairs」や、リクルートグループが運営する「ゼクシィ縁結び」など、アプリを使ってカップルとなる人は近年増えている。MMD研究所の20年9月の調査によれば、スマートフォンを所有する20~49歳の独身の男女5385人のうち、マッチングサービス・アプリを「知っている」と答えた人は27%と19年の調査から1.3ポイント上昇した。「知っている」と回答した人のうち57%が「実際に利用したことがある」と答えた。

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