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 新型コロナウイルスの影響で世界のサプライチェーン(供給網)が大きな打撃を受けた。リスクを断ち切ることのできる「止まらない工場」へ向かって、企業は終わらない努力を続ける。連載1回目は、マツダを通して企業を襲った危機の内容を検証する。浮かび上がるのは、危機が連鎖し、取り組まなければならないことが時々刻々と変わる現実だ。
マツダは危機が連鎖する中で大規模な生産調整を迫られた(広島県府中町の本社工場)

 「地方政府から工場閉鎖の指示は来ていないか」
 「部品の在庫をあるだけ日本に発送してもらえないか」

 1月下旬、広島県府中町。マツダ本社で、購買部門の担当者たちが情報の確認に追われていた。中国湖北省で新型コロナウイルスの感染が広がり、同省の武漢市や近隣地域で自動車部品工場が相次ぎ生産を停止していたからだ。

 中国製部品の供給途絶は、マツダのグローバル生産網を根本から揺るがす。部品が届けられる先は、江蘇省南京市にある中国自動車大手の重慶長安汽車との合弁工場、吉林省長春市のマツダ車を委託生産する一汽乗用車の工場だけでなく、日本やタイ、メキシコも対象となっている。マツダに限らず、中国から世界へ部品を供給していた多くの日本のグローバル企業が苦しんだ。

 まずやるべきことは、供給が途切れる恐れのある部品「レッドリスト」を調べることだった。同社の購買部門は、1次取引先が部品を仕入れる企業「ティア2」以降もたどれる情報システムを使い、1台あたり約3万点ある部品の中で、中国から調達できなくなりそうな品目、生産企業、拠点を数日で洗い出した。ランプ、シートの革や布の縫製品、ワイヤハーネスなど電装関連品……。さまざまな部品、部材が並んだ。

 マツダのこのシステムは、危機管理を進化させてきた努力のたまものだ。2011年の東日本大震災では、被災地域でどの部品を生産しているか、把握するのに2カ月近くかかった。反省からサプライチェーンの情報システムを導入。18年の西日本豪雨では、半日ほどで影響が大きいサプライヤーをつきとめられるようになった。