しかし社外取締役であっても社長が既知の人を呼んでくるというケースが後を絶たないように思います。それではあまり意味がないような気もしますが。
榊原氏:そうです。社外取締役の選び方も非常に大事になってきます。これまでは社長の友人や息がかかった人を選ぶことが多くあったように思います。友人だからあまり厳しいことを言わないということがあり得ました。何も言わないおとなしい人だから彼に頼もう、ということは今でもあると思います。でもそれではいけません。
外形的に取締役の3分の1以上が社外という条件は満たしていても、それだけではそのガバナンスには魂が入っていません。例えば指名委員会等設置会社になると、独立社外取締役が取締役の人事権も持っています。このように、人事権を含めた物事にどれだけ社外目線を入れられるかが本当に大事なのです。
ガバナンスの差が日本企業と海外企業の差に
社外目線が強くなると企業経営にどのような好影響が出てきますか。改めて教えてください。
榊原氏:海外を見ればわかりますが、本来、取締役会というのは非常に強い権限を持っている存在なのです。強力な社外取締役の存在が、強力な取締役会を可能にします。そうするとどんないいことが起こるでしょうか。そもそもガバナンスというと日本ではコンプライアンスを中心に考える人が多いと思います。もちろんそれも大事なのですが、コンプライアンスがしっかりしていれば企業が繁栄するわけではありません。そこは企業が存続するための大前提であって、それができていればいい、というわけではないのです。

強い取締役会があれば、企業の成長戦略をしっかりと描けるのです。例えばポートフォリオ改革です。日本企業は長く続けている低採算事業をなかなかやめられません。先輩社長が始めた事業だから、などのしがらみがあって、ポートフォリオの改革が進まないのです。
でも私が社外取締役として経験したあるグローバル企業は全く違いました。欧米で大企業を経営したことがある外国人が半分以上いて、それぞれの事業に関して「利益率はどうなんだ」「もし失敗したらどうするんだ」と矢継ぎ早に色々な質問が出て、社長の提案も何度も否決するのです。ものすごい切磋琢磨です。こうして完成したプランは非常にブラッシュアップされたものになります。社外の目で忖度(そんたく)なく徹底的にたたくから、優れたプランになるのです。これは私が経験として確信したことです。
そこが日本企業と海外の企業のこれまでの差となっているということなのでしょうか。
榊原氏:そうだと思います。この切磋琢磨が結局、成長率の差になって出てくるのです。例えばROE(自己資本利益率)で見ると、欧米は2ケタが当たり前ですが、日本企業はかつて5%くらいでした。これだけ差があったのです。これは取締役会のガバナンスが利いていなかったことが一つの原因でしょう。
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