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 コロナ禍は金融機関の経営をむしばみかねない。業績が落ち込み、資金繰りに困る企業が続出。日本経済のV字回復は程遠く、メガバンクだけでも貸し倒れ引当金を含めて与信コスト1兆円を積む。だが三井住友フィナンシャルグループの太田純社長はこうした国難の今こそ、自らの業態の変革こそ欠かせないと考える。DX(デジタルトランスフォーメーション)との向き合い方をはじめ、激動下での再興シナリオと近未来図をどう描くのか聞いた。

新型コロナウイルスの感染拡大が経済に多大な影響を及ぼしています。三井住友FGの場合、いわゆる「与信」の費用は今期で4500億円。コロナ収束が見通しにくい中、この額で足りますか。

三井住友フィナンシャルグループ太田純社長(以下、太田氏):私たち金融業は「GDP(国内総生産)ビジネス」なのですよね。日本経済が伸びると業績も伸びる。今、コロナの影響もあって潜在成長率は1%を切り、経済活動が急減速していますので、当然ながら業績にダイレクトに負の影響を受けています。業績が悪くなっている取引先企業が多くあるので、我々のトップライン(売上高)もボトムライン(利益)も大変苦しくなっている。これは偽らざるところです。

 与信コスト4500億円は、マクロ・ミクロ両方のアプローチで算出しています。マクロは今年度初めに想定したよりも悪くなっていますが、ミクロに関してはそれほど大きな狂いはない。海外で一部、大口で経営悪化がありましたが、今のところはほぼ想定の範囲内と考えています。

中小企業はコロナ禍でさらに苦境に追い込まれそうです。特に経営基盤の弱い地域金融機関に影響が出そうです。

太田氏:日本の金融システムそのものに影響が出てくるとすれば、まさにそのルートが一番、懸念されます。中小企業がコロナでダメージを受け、地域金融機関の不良債権比率が高まり、金融システム全体に影響を及ぼす流れです。

 ただ、2008年のリーマン・ショックと比べると様相は異なります。当時は、金融機関の経営破綻を発端とした危機だっただけに体力が弱っていたところもありましたが、今回は総じて資本は十分あり、貸し出し余力もある。無論、赤字続きの「ゾンビ企業」をどうするかという議論はかねてあり、コロナ対応の実質無利子・無担保融資などでそうした企業を生き延びさせるかもしれない。その辺はよく注意したいと思います。

1958年生まれ。1982年京都大学法学部卒業後、旧住友銀行(現三井住友銀行)入行。ストラクチャードファイナンス営業部長、投資銀行統括部長などを経て、2017年三井住友フィナンシャルグループ副社長、19年4月から現職。社長就任後、「カラを、破ろう。」のスローガンを打ち出し、従来の金融業務の枠にとらわれない新規事業を積極的に支援している。(写真:北山 宏一)

「大盤振る舞い」の後始末には相当な時間

政府による大規模な財政出動をはじめ「大盤振る舞い」が続いています。もちろんコロナ禍で必要な対応ですが、心配な部分はありませんか。

太田氏:「後始末」には、相当な時間がかかるでしょう。財政健全化、基礎的財政収支の黒字化などと言っていられない状況に見えますね。計画はもう瓦解していて、行き場を失った資金が様々なマーケットに流れ、資産バブルなどを起こす可能性もあると思っています。

 これだけ公的な債務が増えると、日銀は金利を引き上げられないでしょうし、イレギュラーな状況が長期間続くとみています。

大手銀、地銀ともに大量の国債を買い、国債の安定消化につなげてきました。今後もこの姿は変わりませんか。

太田氏:銀行、生損保含めた機関投資家がどこまで国債を買い支えられるかという問題はあります。これ以上発行量が増えれば対応にもおのずと限界が来ます。そして我々にとって一番大きいのは、国債の格付けが引き下げられること。そうなれば影響は計り知れません。