
どうすれば日本を再興の道へと導けるのかを各界の識者らに聞く「再興ニッポン」。今回は、一斉休校など混乱が続いた教育分野のIT化で独自の道を突き進む佐賀県の山口祥義知事に聞きました。佐賀県は公立の小中学校・高校などへの教育用コンピューターの整備率は全国トップ。コロナ禍を機に自治体の取り組みに注目が集まる中、山口知事は首長の構想力や住民との意思疎通が今まで以上に求められていると話します。

1965年生まれ。東京大学卒業後、自治省(現・総務省)に入省。JTB総合研究所などへの出向も経験したのち、2015年に佐賀県知事に就任(写真:諸石信)
コロナ禍で自治体の取り組みや首長の発言などに注目が集まる機会が増えました。
佐賀県・山口祥義知事(以下山口氏):先が見えない中で、感染症予防に向けた対策を打たなければいけない。片や、様々な社会・経済情勢を鑑みて前向きな取り組みを進める必要もある。構想力、創造力、団結力が重要だ。地域のリーダーと住民がどういうキャッチボールをして、どういう街を構想し、一緒に創造していくのか。この点で地域によって今まで以上に差別化される時代になってきた。
改めて自治体の役割が問われているということですね。
山口氏:高度経済成長期は金太郎あめ、どこに住んでも同じという時代だった。今はあめ自体が地域によって違ってくる。
新型コロナへの対応も自治体によって違いが出ています。
山口氏:佐賀県は2月末の政府の一斉休校要請の際も、木曜(2月27日)に意思表明があり、土曜に(安倍)首相の会見があって、月曜から(休校)ということだったが、急に言われても無理だから火曜からと、その上でひとまず2週間だけ休校を決めて、そこからは現場を見ながら物事を決めようと動いてきた。
医療体制についても、あらかじめ体制を整えておかないと、間違いなく感染者は増えて現場が逼迫すると考え、(緊急事態宣言前の)4月3日に「プロジェクトM」というのを立ち上げた。5つの医療機関に加え、重症化した患者を受け入れてもらえるよう佐賀大学の医学部にもお願いした。無症状・軽症の方向けにはホテルを借り上げた。
プロジェクトMのリーダーは感染症ではなく救急医療が専門の医師に務めてもらった。ある種(治療の優先順位を決める)トリアージ的な対応を取る必要もあり、危機管理、オペレーションの問題だと感じていたからだ。
県によって医療体制など状況は異なります。それによって取るべき対応を考えるのが自治体の仕事だと。
山口氏:様々な専門家の意見は聞くが、判断するのは政治家だ。新型コロナのように価値観が錯綜(さくそう)している事象への対応は誰かが腹を決めて決断しなければならない。県民の投票で選ばれている知事として、責任を果たそうという思いだった。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り1298文字 / 全文2408文字
-
【春割】日経電子版セット2カ月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
【春割/2カ月無料】お申し込みで
人気コラム、特集記事…すべて読み放題
ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「再興ニッポン」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?