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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界中の科学者が感染の予防や対策につながる研究に力を注いでいる。日本を代表する研究機関、理化学研究所でも、緊急で新型コロナに関連したテーマを募り、研究を進めている。科学への期待がいつも以上に高まる中、理研の松本紘理事長に研究のあり方などを聞いた。

松本紘(まつもと・ひろし)
1942年生まれ。67年、京都大学大学院工学研究科修士課程を修了し、京大工学部助手。73年工学博士、74年助教授。NASAエームズ研究所、スタンフォード大学の客員研究員を経て、87年京大超高層電波研究センター教授。京大理事・副学長を歴任後、2008年京大総長。15年から理化学研究所理事長、18年からは国際高等研究所所長を兼務する。専門は宇宙プラズマ物理学、宇宙電波科学、宇宙エネルギー工学。

世界の科学者が新型コロナ関連の研究に取り組んでいます。理研でも研究を進めているのでしょうか。

松本紘理研理事長(以下、松本氏):理研でも、緊急で新型コロナ関連の研究テーマの募集をしました。研究をするためにはお金が必要なので、テーマを挙げてもらってそこから研究担当の理事による審査を経て、選ばれたテーマに予算を付けるためです。50以上の応募があり、そこから大小約30のテーマを選出しました。年度予算はすでに決まっているので、臨時で資金を出せる理事長裁量経費から合計約1億7000万円を追加で投入しました。

コロナ禍を受けて、実際にどんな研究が進んでいるのでしょうか。

松本氏:スーパーコンピューター「富岳」を用いて既存の治療薬の新型コロナへの効果を調べる研究のほか、独自の蛍光たんぱく質を使って新型コロナに感染した細胞を光らせて可視化する技術の開発などを進めています。新型コロナの検査法では、従来のPCR法であれば1~2時間かかるところを10~30分にまで短縮した方法も開発しました。社会の課題解決に向けてさまざまな研究に取り組んでいます。

新型コロナの感染拡大によって、私たちの日常生活は脅かされました。感染の収束や予防などに向けて、科学への社会全体の期待が高まっています。