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 英国に世界最大級の債券系ヘッジファンドを率いる日本人がいる。キャプラ・インベストメント・マネジメントの浅井将雄氏だ。大手年金基金や政府系ファンドからの預かり資産は3兆円規模に達する。設立から運用成績はプラスを続け、新型コロナ危機で相場が荒れる今期も運用成績に自信を示している。

 浅井氏がロンドンで同社を設立したのが2005年。それから15年の間に、日本は国内総生産(GDP)で中国に抜かれ、3位に後退。経済面においては存在感が低下しつつある。日本が再浮上するためには何が必要なのか。世界の金融の第一線で闘う浅井氏に、日本の強みと課題を聞いた。

浅井将雄(あさい・まさお)氏
1990年慶応義塾大学卒。UFJ銀行(現:三菱UFJ銀行)でグローバルトレーディングチームヘッドを経て、2003年にロンドン赴任。同行現地法人のUFJインターナショナルにて戦略トレーディング部長。東京三菱銀行との合併を機に同僚のヤン・フー氏とともに独立し、2005年にキャプラ・インベストメント・マネジメントを設立。政府系ファンドや大手金融法人、大手年金基金などからの顧客預かり資産は約3兆円で、債券系では世界最大級の規模を誇る(写真:永川智子)

新型コロナウイルスの流行で世界経済が大きな影響を受けています。今後の世界経済をどのように見通していますか。

浅井氏:世界銀行が今年の経済成長率をマイナス5.2%と予想しており、戦後最大の経済危機になると思います。有効なワクチンがどれくらい行き渡るかによりますが、当初期待されていたV字回復は難しく、U字回復かL字回復になるのがメインシナリオだと見ています。

日本は新型コロナ対策として、2020年度補正予算に120兆円を超える規模の財政支出を盛り込みました。コロナ対策や経済対策をどのように評価していますか。

浅井氏:日本は今回、タイミングが悪く19年後半に経済成長が止まっていたところにコロナショックが来てしまいました。世界の国々と比較しても、日本の財政支出はGDP(国内総生産)に比べた割合が高く、経済対策に力を入れていると言えるのではないでしょうか。

 ただ、コロナ対策だけでなく、そこから成長につながるような経済対策をしてほしいと思います。その際に柱にしてほしいのは、医療、デジタル、環境・グリーンエネルギーの3つの分野です。今回は特に医療関連の予算が非常に小さいのが残念でした。今後の成長分野と位置付け、大胆に10兆円ぐらいの予算をつけてもよかったのではないでしょうか。

コロナ危機により、世界の国々の力関係が変わる可能性があります。日本は今、世界の中で存在感を高められるか否かの分水嶺を迎えつつあると言えます。英国から日本を見て、この20年ぐらいで日本の存在感はどのように変わってきたのでしょうか。

浅井氏:リーマン・ショック後の2008~20年までの間に、日本の位置付けが大きく変わったのは2010年です。GDPで世界2位の座を中国に奪われてから、一気に2倍以上の差をつけられました。中国に引き離され、世界の中で日本の存在感が低下しました。

 私が英国に赴任した2003年には、日本の電機産業は大きな存在感がありました。英国のテレビ売り場の半分ぐらいは日本のブランドの製品が占めていましたが、今はほんのわずかです。

 金融業も同じような状況にあります。2003年ごろには、英国で名の知られる金融機関はアジアで日本ぐらいしかありませんでした。日本は間接金融が主体で銀行が強かったのですが、金融危機の間にその力がそがれてしまいました。直接金融とシャドーバンキング(影の銀行)の拡大で、銀行業の地位が下がったという事情もあります。その中で日本の金融機関の数が少なくなり、存在感が低下していきました。