新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中小企業が苦境に追いやられ、地域の金融機関の存在意義が改めて問われている。そんな中、徹底した現場主義でスピード融資を実行し、コロナ禍で苦しむ中小企業を支え続けているのが、広島市信用組合だ。運用はほとんどせず、預貸率は約88%。ひたすら貸して回収する。日本経済を再生する金融道を同信用組合の山本明弘・理事長に聞いた。

山本明弘(やまもと・あきひろ)氏
広島市信用組合理事長。山口県出身。専修大学卒業。1968年広島市信用組合入組。2001年専務理事、04年副理事長を経て、05年6月から現職。今も毎朝5時に出社して、企業訪問も繰り返すという。高校時代は野球部。今もプロ野球、広島カープの試合の始球式に毎年のように登板している。(写真:森本勝義)

新型コロナウイルスの感染拡大で、サービス業を中心とした中小企業は売り上げの大幅減に今も苦しんでいます。資金繰りのための融資のスピードが当初から問題になりました。広島市信組は独特の融資姿勢で知られています。

山本明弘・広島市信用組合理事長(以下、山本氏):新型コロナ対策で国が設けた実質無利子・無担保融資を含めて3月から8月末までに計3236件、501億7000万円の融資を実行しました。これは県内の金融機関でも相当な上位にあるはずです。

 でも、量だけではありません。当信組は、申し込みから3日程度で融資を決めています。そのスピードこそが、顧客にとっての一番の付加価値なんです。

 だってそうでしょう。この未曽有の状況ですから、経営者はとにかく早く融資をしてもらいたいのです。ところが、金融機関によって1~2週間の差はすぐに出る。国の持続化給付金なども出るまでに時間がかかるといわれました。

 ただし、むやみにスピードを上げられるわけではありません。「平生(へいぜい)」の活動こそが大事なのです。

自らアポなしで企業訪問

どんな活動をすることですか。

山本氏:普段から支店長以下、営業の職員は顧客の企業を常に回る。そのときは、その会社の(財務の)数値を必ず頭に入れていく。うちには35の店舗がありますが、取引先の決算が終わったら2カ月以内に皆、決算書の内容を登録します。それができていないところは、支店によって数社あるかどうか。全体でも98%の企業の決算を即座に登録しています。

 私自身も頻繁に行きますよ。それもアポなしで。ポイントになりそうなところを選んでですが。

 アポなしで訪問するのは、普段の様子を見るためです。もし不在だったら、お土産のまんじゅうを置いていく。それで、無駄な時間を使ったなんて全く思いません。

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