新型コロナウイルスの猛威は、日本が抱える様々な課題や欠陥を明らかにしました。世界の秩序が変わろうとする中、どうすれば日本を再興の道へと導けるのか。シリーズ「再興ニッポン」では、企業トップや識者による意見・提言を発信していきます。今回は規制改革をライフワークとしてきたオリックスの宮内義彦シニア・チェアマンです。

1935年神戸市生まれ。60年米ワシントン大学経営学部大学院でMBA取得後、日綿実業(現双日)入社。64年オリエント・リース(現オリックス)入社。80年代表取締役社長・グループCEO(最高経営責任者)、2000年代表取締役会長・グループCEO。14年から現職。政府の総合規制改革会議議長や経済同友会副代表幹事なども務めた。(写真:的野弘路)
1935年神戸市生まれ。60年米ワシントン大学経営学部大学院でMBA取得後、日綿実業(現双日)入社。64年オリエント・リース(現オリックス)入社。80年代表取締役社長・グループCEO(最高経営責任者)、2000年代表取締役会長・グループCEO。14年から現職。政府の総合規制改革会議議長や経済同友会副代表幹事なども務めた。(写真:的野弘路)

先日、ユーグレナの出雲充社長にも「コロナ禍からの日本の再興」というテーマで取材に応じていただきました。「日本は変革できないまま『失われた30年』を迎えてしまった。今さら何も変わらない」と達観していたのが印象的でした(該当記事)。1990年代半ばから政府の民間委員として規制改革に取り組んできた当事者として、出雲さんの心境にどう応えますか。

宮内義彦オリックス・シニア・チェアマン(以下、宮内氏):政府が寝ていようと、頑張っていようと、社会は刻々と動いていきます。特にエポックメーキングな出来事があれば、大きく動きます。コロナ禍は間違いなくエポックメーキングな出来事です。終息すれば、世の中の風景が以前と違って見えるのは間違いありません。

 日本の残念なところは、こうした社会の動きに引きずられるようにして、やむなく古くなった制度や規制などの社会システムを変えていることです。本来であれば政府がもっと先見性を働かせて能動的にシステムを整え、新しい方向に社会をけん引することが求められます。これをやれると素晴らしい国が出来上がります。

 ところが日本の場合は「先見型」ではなく、「引きずられ型」なので、必要最低限しかシステムが変わりません。だから出雲さんをはじめとする若手の皆さんは焦燥感や絶望感を抱くのではないでしょうか。しかし、このようになるのが本当の日本の姿でしょうか。社会の構造を変えていけば変わるはずです。諦めてほしくはありません。

宮内さんは政府の民間委員として、引きずろうとしてもビクとも動かせなかった岩盤規制に何度も直面したのではないですか。例えば保険診療と自由診療を併用する混合診療を解禁しようとしましたが、いまだに実現していません。あるいは宮内さんは直接関わっていませんが、自家用車で乗客を運ぶライドシェアも日本では禁じられたままです。

宮内氏:そう。引っ張ろうとしてもビクとも動かない部分が存在する。それはまさに日本にとっての大きな損失です。

実際に官僚や族議員、既得権益を持った業界の強烈な反対に遭って、規制改革が頓挫してしまったご経験は多いのでしょうね。

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