新型コロナウイルスの猛威は、日本が抱える様々な課題や欠陥を明らかにしました。世界の秩序が変わろうとする中、どうすれば日本を再興の道へと導けるのか。シリーズ「再興ニッポン」では、企業トップや識者による意見・提言を発信していきます。今回は、企業の経営変革や組織変革、ダイバーシティー推進などを手がけるチェンジウェーブ(東京・港)の佐々木裕子社長です。佐々木氏は「コロナ禍では無意識のバイアスが出やすくなる」と話します。

<span class="fontBold">佐々木裕子(ささき・ひろこ)氏</span><br> 東京大学法学部卒、日本銀行を経て、マッキンゼーアンドカンパニー入社。シカゴオフィス勤務の後、同社アソシエイトパートナー。8年強の間、金融、小売り、通信、公的機関など数多くの企業の経営変革プロジェクトに従事。2009年チェンジウェーブを創立。変革実現の支援や変革リーダー育成など、個人や組織、社会の変革を手がける(写真:竹井 俊晴、以下同)
佐々木裕子(ささき・ひろこ)氏
東京大学法学部卒、日本銀行を経て、マッキンゼーアンドカンパニー入社。シカゴオフィス勤務の後、同社アソシエイトパートナー。8年強の間、金融、小売り、通信、公的機関など数多くの企業の経営変革プロジェクトに従事。2009年チェンジウェーブを創立。変革実現の支援や変革リーダー育成など、個人や組織、社会の変革を手がける(写真:竹井 俊晴、以下同)

新型コロナが社会に与えた影響をどう見ていますか。

佐々木裕子チェンジウェーブ社長(以下、佐々木氏):私は企業や組織の変革に携わっているのですが、企業側の前提が変わり始めています。以前は事業の成長性や効率性を求めることが大前提にありましたが、これだけ不確実性が増した今、どうやってサステナブルに事業を継続できるかに焦点が移っているようです。中長期のビジョンももちろん大事ではあるのですが、見通しきれない。戦略をカチッと決めきることの重要性が薄れているように感じます。どれだけ柔軟にアジャイルにできるかが、経営側には必要になってくるのではないでしょうか。

 一方、個人にも変化があります。私の周りでバリバリ仕事をしている起業家さんたちから、「こんなに家族のことを考える時間が増えたのは初めてだ」という話を聞くようになりました。今までは仕事や社会貢献が最初にあり、そこに生活をどうプラスしていくかという世界でした。でも今はまず生活があってそこに仕事をどう入れ込むかというスタイルに逆転し始めている気がします。

在宅勤務が浸透すると仕事とプライベートの境目がなくなる感覚がありますよね。

佐々木氏:私も以前はシッターさんに子供のお迎えをしてもらうこともありましたが、今は自分で行こうと思うようになりました。リモートワークで移動時間が短くなったのも理由ですが、「生活をサステナブルなものにした上で仕事をする」という意識に変わりました。

 毎日会社に物理的に集まってみんなで何かを共有するという世界はもう戻ってこないのではないでしょうか。今回のコロナ禍でみなさん、通勤電車に乗らないことで生産性が高まるとか、家族とより長い時間一緒にいられるといったメリットを享受されたと思います。企業、個人それぞれが変わることで、会社と個人の関係も変質し始めています。個人が会社から離れているのです。

どういうことですか。

佐々木氏:若い方を中心にすでに広まり始めていた意識だと思いますが、会社でキャリアを積んでいこうという感覚が薄れてくる。そうなれば、帰属感も良くも悪くも薄れていきます。会社と個人の関係が対等になる。個人の時代になっていくと思うのです。

 そうなったときに、企業は個人に魅力を感じてもらわないといけない。どういう風にウィンウィンの関係をつくり続けられるかが大事になってきます。昔みたいに会社がパワーを持って、「皆さん頑張ってください」というモデルではなくなると思うんです。

選ばれ続けなければいけないという点で企業にとっては厳しい時代になってきますね。

佐々木氏:でも企業にとってもいい面があるんです。企業の変革を手がけていて感じるのですが、本当に新しいものが生まれるのは、異なるものがかけ合わさったときです。集団でいるとやっぱり集団心理が働いて、中心に集まってしまいます。

確かにそういう側面はありますね。

佐々木氏:個が立つと、会社との距離感ができるので、違うことは違うと言いやすくなるんです。

 最近、Zoom会議をしていてそのことを如実に感じました。Zoomの画面では、社長も1枠ですし、現場の社員も1枠ですよね。それでしゃべっていると、すごくフラットになった気がするんですよね。社長以外の人がずいぶん話すようになりましたし、現場の社員の「自分たちでやろう」という意識が強くなったと感じました。

 そういう意味で言うと、個が立てば、会社にいい影響が与えられる。だから、うまく個人を立たせられるかが、企業の分かれ目なのかもしれないですね。