どうすれば日本を再興の道へと導けるのかを著名人に聞くシリーズ「再興ニッポン」。今回はデジタルアートのトップランナーとして世界の注目を浴びるチームラボの代表、猪子寿之氏です。事業家としてのみならず、独自の目線から人の動きを観察し続けている若手論客に、我々は今後、どこに向かって進んでいくのか、社会や人間の変化を聞きました。

猪子寿之[いのこ・としゆき]氏
チームラボ代表。1977年、徳島市生まれ。東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボを創業。アニメーターや技術者、建築家、数学者などで構成するクリエーター集団のチームラボはデジタルアートの常設展示「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless」(東京・お台場)などを展開する。(写真:吉成大輔、以下同じ)

新型コロナウイルスの感染拡大は、社会にどのような変化をもたらしますか。

猪子寿之・チームラボ代表(以下、猪子氏):大きな流れは変わらない。「アフターコロナ」のようなものはないと思っている。今の状態がいつまで続くかはわからないが、収束後の世界は元に戻るはずだ。過去にも疫病は多くあったが都市化が止まったことはない。人は長い年月をかけ密へと向かっている。

 みんなが「変わる」と言っているのは、そう言えば人々の関心が湧き、もうかるから。ビジネス的に、変わることにしているのだと思う。オフィスを持たずに仕事するといったことは、高付加価値の領域では起こり得ない。従来から技術的にはできるにもかかわらず、それを実行した企業は成功していない。ただ、コロナ以前から存在する変化の後押しにはなっている。例えば、環境変化への対応のようなものだ。以前からあることは加速するが、これまでに起こっていないことは、いずれ元に戻る。

長い歴史の中で、人はどういった方向に動いているととらえていますか。

猪子氏:近代の大きな流れは、産業革命と情報革命だ。産業革命は加熱でピストンを動かす蒸気機関の話で、物理的に動くことが基礎だった。その象徴は乗り物。富裕層は車を買い、クルーザーを買い、飛行機を買った。動く必要があるので、郊外を受け入れた。前世紀の最高のエンタメと言っていいディズニーランドはほとんどが乗り物だ。

 一方、情報革命はデジタルの発明であり、脳の拡張だ。グーグル、ツイッター、フェイスブック、アップルなどは脳を拡張したい人の関心に応えている。「生きている意味を感じること」が豊かさになっている。

 以前の世界は、固定的で受動的だったとも言える。映画も遊園地も受動的で、行動原理は時間を消費し、楽しませてもらうことだった。今後は、すべてが変化し続けるようになる。ゴールはあらかじめ設定されておらず、自分で表現し、アップロードする。その能動的な動きが、脳をより拡張させる。重要なのは、自らの意思で歩くこと。感性が育てる旅であり、アートの時代と言っていい。単なる時間の消費ではなく、意味を求めていく。

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