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全世界が新型コロナウイルスの猛威におののく中、日本の再興の道を探るのは容易ではありません。コロナ登場前の姿に戻ることこそ再興と考える人は極めて少ないからです。日本が抱える様々な負の遺産を顕在化させたコロナ禍は、外圧で変化し続けてきた日本にとって、一つの契機になることは間違いないでしょう。ただし、人々の思い描く未来の姿はそれぞれ異なります。どこに課題があり、何を変えていくべきなのか。様々な識者に視点を聞くシリーズ「再興ニッポン」では、インターネットを通じて不特定多数の人々から資金を調達するクラウドファンディングを手がけるREADYFOR(レディーフォー、東京・千代田)の米良はるか代表取締役CEOに話を聞きました。

米良はるか(めら・はるか)氏
1987年、東京都生まれ。2014年にクラウドファンディングを主事業とするREADYFORを設立した。(写真:的野 弘路)

新型コロナウイルスでどのような影響を受けましたか。

米良はるか・READYFOR代表取締役CEO(以下、米良氏):今年2月初めの時点では海外での感染報道が多く、どこか他人事のように見ていた記憶があります。私たちはクラウドファンディングサイトを運営していますが、問い合わせが特に増えるといった影響もありませんでした。

 2月末に政府が大規模イベント開催に対する自粛要請を出したタイミングで、イベント中止を余儀なくされた主催者を対象にクラウドファンディングのサービス手数料を無料にする特別プログラムを提供しました。私たちのクラウドファンディングへの問い合わせが急増したのは3月に入ってからです。

 正直、悩みました。あらゆる事業者が大変な状況に追い込まれている中で、私たちがサポートすべき人たちが誰なのか、分からなかったからです。

 数多くの人たちが困難に直面していました。一方、事業の継続性を考えれば私たちが倒れるわけにもいかない。例えば、サービス手数料の無料化をどこまで対応すべきなのか。線引きがとても難しかったのです。経営陣、社員で議論を重ねました。

 その頃、感染者が増加する欧米でのお金の流れの変化について調査を始めていました。そこで見えてきたのは医療機関の現場で働いている人たちへのサポートの重要性。社会機能を維持するために前線で働くエッセンシャルワーカーと呼ばれる人たちこそお金が必要になるのではないかということが分かってきました。

 今回のコロナ被害は通常の災害とは異なり、災害のプロと呼ばれる人たちがいませんでした。どこが最も被害を受けるのかが分かりません。現場の状況が分かっていて、意思決定ができる人たちは誰なのか。それが政府のクラスター対策班の先生たちでした。こうした方々の協力を得て4月に立ち上げたのが「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」です。

 政府が予算をつけてサポートしていく領域があります。しかし、資金が実際に拠出されていくまでタイムラグが発生します。こうした部分を民間の資金で迅速にまかなうことを目的としました。当初はどのくらい集まるか分かりませんでしたが、現在では個人や企業から8億4000万円近くの寄付金が集まっています。

 この基金は通常のクラウドファンディングとは少々異なるスキームになっています。私たちが主体となって資金を集め、審査や資金の分配を執り行います。助成審査部門では13人の専門家とともに諮問委員会を開き、「今、助成が必要な現場」を見極めています。

 個人的に良かったと思えることもありました。なぜ、自分たちの企業が存在しているのか、なぜこの事業に取り組んでいるのか。常日ごろから自分としても考えていたし、メンバーにも伝えていました。今回のような広範囲に影響を及ぼす被害が発生している今こそ、私たちの頑張りどころだということを皆、理解して動いてくれました。

「声なき声」にどう耳を傾けるべきか

クラウドファンディングの存在意義が改めて明確になったということでしょうか。

米良氏:私たちは資本主義の世界でお金が流れにくい分野に、お金が流れる方法を編み出していく会社です。未来の日本の姿、世界の姿を考える時、絶対に守っていかなければならないものがあります。危機的状況下において、クラウドファンディングが「今を守る力」や「未来を創る力」を持っているということを改めて認識しました。

 一方、クラウドファンディングはまだまだ声を上げられる人だけが使えるツールです。最も苦しんでいるのは、実は声すら上げられない人たちなんです。

 今回、基金を使ってマスク購入資金をサポートさせていただいた高齢者施設支援団体があります。ここは政府によるサポートが行き届かなかった団体です。

 なぜか。あまりにも小さな団体だったからです。国が社会の隅々で困っている人や団体まで把握して迅速にサポートしていくのは非常に難しい。結局、大きな団体に資金を渡して、そこが把握している範囲で分配をしていきます。今回、こうした団体をサポートできた点は補完機能として私たちが動けた結果と思っています。

 また、地域の飲食店支援のために日本商工会議所と組ませていただきました。現在、全国70の商工会議所がクラウドファンディングを立ち上げ、新型コロナ収束後に店舗で利用できる食事券を販売しています。

 本当に大変な困難に直面したとき、人は思考停止に陥ります。一つひとつの飲食店がクラウドファンディングを立ち上げられるとは限りません。中間支援的な存在と組み、こうした声を上げられない人たちをどう支援していくのかについて検討を重ねていく中で見えてきたことでした。