全4996文字

 新型コロナウイルスの猛威は、日本が抱える様々な課題や欠陥を明らかにしました。世界の秩序が変わろうとする中、どうすれば日本を再興の道へと導けるのか。シリーズ「再興ニッポン」では、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長ら、企業トップや識者による意見・提言を発信していきます。

 今回は、横浜銀行と東日本銀行を傘下に置くコンコルディア・フィナンシャルグループの大矢恭好社長です。コロナ禍の中、金融機関は融資を通じて企業を支えています。しかし、融資による一時しのぎではなく、日本企業が本当の意味で強くならなければ、企業も金融機関も共倒れになりかねません。金融機関がすべきことについて、話を聞きました。

大矢恭好(おおや・やすよし)氏
1985年一橋大商卒、横浜銀行入行。リスク統括部長、経営企画部長、常務などを経て、2018年に頭取。16年からコンコルディアFGの取締役を兼務。20年4月から現職。全国地方銀行協会の会長も務める。神奈川県出身。58歳

融資先の新型コロナの影響はいかがでしょうか。

大矢恭好・コンコルディア・フィナンシャルグループ社長(以下、大矢氏):飲食、宿泊、イベント、小売り、運輸などが大きな影響を受けていますが、引き続き業績が戻っていないです。我々は金融機関としてそうした企業への資金繰りをまずしっかりサポートしています。3月からプロパー(自前)融資に関して、各支店長の判断で迅速に融資するようにしました。5月から実質無利子・無担保の融資も実施しています。融資の申込件数が1万2000件以上あり、金額が7000億円を超えています。その半分以上を既に実行しました。そのうち700社ぐらいが弊社から借りたことがない新規顧客です。

資金支援で心配な面はありますか。

大矢氏:自治体、信用保証協会と連携する制度融資もあるので資金繰りで厳しい企業に対しても、現状は融資できる体制が整っています。心配しているのは今後です。例えば、新型コロナ対応の保証協会の保証付き融資は3年間無利子ですが、企業がこれから金利を払うようになったり、融資返済を始めたりするときに、融資をきちんと返済できるようにサポートしていくことが最重要です。そのためには事業者のビジネスモデルを変えたり、場合によっては、リストラをしたりして企業価値を上げ、キャッシュフローを生むための提案を我々がしていかないと、融資が返ってこないということにもなりかねません。

 今はコロナ禍で経済を落ち込ませないために一時的にカンフル剤を打っている状態です。このカンフルは決してタダではありません。事業の回復度合いを見極めながら、どのような返済計画にするか、このキャッシュフローではこのように返済した方がよいなどと話し合いをしていきます。赤字が続いていれば、資本がどれほど影響を受けるか、資本を補う方法はないのかなど、財務面、営業面でいろいろと提案していきたい。

 その中でデジタル化も1つのポイントです。赤字資金を短期で調達した企業もあります。資金繰りで追われてしまってはうまくビジネスができませんし、お互い不幸になりますので、金融機関は取引先へのコンサルタンティングを強化することが日本経済にとって重要なことだと思います。

融資先の業績悪化などに備えた与信費用も増えています。

大矢氏:新型コロナの影響があるところは、デフォルト(債務不履行)も前提に厳しく見ました。新型コロナ前から業績が厳しい取引先もありますので、そのピッチが速くなって我々の想定以上に早くデフォルトする可能性も織り込んでいます。既に過去の超長期のデフォルト率を基に与信コストを計算しています。そういう意味では引き当ての考え方についても、随時、金融庁が示すルールだけではなくて厳しく見直していますので、対応できていると思います。

 企業の悩みはそれぞれ違います。例えば、いつか事業承継をしようと考えていたが、早めたいという人もいるでしょうし、事業規模を大きくしようとM&A(合併・買収)を考える人もいるでしょう。顧客の状況、ニーズ、課題を把握することもこれまで以上に求められています。