では新型コロナでもそれほど慌てずに済んだのでしょうか。

 いやいや(笑)。リーマン・ショックは金融発でした。HRビジネスはどんと落ち込みましたが、日常消費を中心に実需はそこまで落ちませんでした。

 しかし今回は飲食店に大きな影響が出ていますし、旅行や結婚式なども延期や取りやめが増えています。リーマン・ショックでは大きなマイナスにならなかった分野も、今回は大きく落ち込んでいます。

 ただ、リクルートの強みは危機にあっても、既存事業の構造を変えながら次の時代の主軸となっていくようなビジネスを開発してきたことにあります。

 現在は中長期の戦略として、2つのテーマがあります。一つはHR産業のグローバルリーダーになること。採用プロセスなどHR産業にはまだ効率化の余地がありますから、AI(人工知能)を使って最適な求人情報を提供する米インディードの技術やプラットフォームを使って、求職者がより仕事を見つけやすくしていきます。

 もう一つは「Air ビジネスツールズ」などのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)によって日本の中小企業の生産性向上に貢献していきます。

キャッシュレス決済「Airペイ」など、中小企業向け支援ツールの普及に注力
キャッシュレス決済「Airペイ」など、中小企業向け支援ツールの普及に注力

 この2つのテーマの実現はそもそも時間がかかるものですが、新型コロナを受けてより速く進めていきたいですし、アフターコロナに向けた力の入れどころかと思っています。

デジタル技術がなかった

新型コロナ前まで業績をけん引してきたインディードの買収はリーマン・ショック後の12年でした。

 もともとリクルートはインターネットの登場以前から、情報誌の広告がどれだけ最終購買に結び付いたのかを測定するなど、科学的にビジネスをしてきました。でもアナログがデジタルになったときに、リクルートはテクノロジーを持っていませんでした。情報誌からインターネットへの転換はうまくいきましたが、その先のクラウドやスマートデバイス、ビッグデータの時代になって難しくなってきました。

 そこで12年にHRに特化して、ナンバーワンになるという目標を打ち出し、我々の力だけではテクノロジーにおいて世界で勝てないということで探して出合ったのがインディードです。

 美容室向けの業務管理サービス「サロンボード」を始めたのもこの時期です。また、学習講座アプリの「スタディサプリ」も10年ごろに検討を始めていました。

12年にHRの分野で世界に出ていくという決断をされたのは、どのような背景からですか。

 12年にCEOに就任する前は、中長期の方向性を決めるリーダーの役割でしたが、その当時から海外に行くか行かないかは大きな課題の一つでした。

 行くのであれば集中しなければなりませんから、一番になるというスタンスを取るしかありません。となれば、そこに資源を投入しなければなりませんので、上場という資本政策を取るという順序でした。

 HRに関しては、例えば人材派遣業で見てみると、我々の利益率が高かった。日本特有の事情があるにせよ、我々のオペレーション能力もあるのではないかと考えました。

 そこでまず米国の数十億円規模の企業を買収してみました。すると利益率が上がったので、次は米国で300億~400億円の企業を2社買収しました。これも利益率が向上したので、その後は数百億円規模のオーストラリアの上場企業を買い、さらに1900億円ほどの欧州の上場企業も買収していきました。

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