
販売環境が悪化する中で高いノルマを維持すれば、不祥事の温床になりかねない。他方、目標設定がないと会社や社員は成長力を失う恐れがある――。そんな八方塞がりの状況にある日本企業の営業部門。こうなると、独創的な経営モデルでも天才型人材が居並ぶわけでもない「普通の会社」が、今後選択できる道は主に2つしかない。
1つは、目標設定制度を廃止してある程度、成長を諦めること。もう1つが現状のノルマ制度を維持しつつ、売る力を伸ばすことだ。販売力を底上げし、多くの社員が厳しい環境でもノルマを達成できる状況になれば、不祥事やモチべーション低下の可能性は当然消えていく。
とはいえ、昭和の時代からあらゆる営業法を研究し尽くしてきた日本企業。人口減少による市場縮小に加え、コロナ禍に伴う景気後退も進む中、販売力の伸びしろなどあるのかという声もあるはずだ。
結論から言えば、ある。コロナ禍によって今後、営業の舞台が「接触型」から「非接触型」へ大転換していく可能性が高いからだ。今のところ非接触型営業は、先進IT企業など一部を除き、多くの会社にとって未知の領域。その分だけ、研究や進化の余地もなければおかしい。
オンラインだと相手は話を真剣に聞かない
オンライン営業で売る力を伸ばすには、専用ツールを充実させることも重要だ。例えばZoomやSkypeなどウェブ会議ソフトを活用する場合、資料を画面共有しポインターで重要な部分を示したり、デモ画面を見せたりできなければ話にならない。だがそれだけでは不十分だ。
「非接触営業で最も重要なのは、PC画面の向こうにいる人に、自分の話を聞いてもらう力だ」
企業研修などを手掛けるインプレッション・ラーニング(東京・中央)の藤山晴久社長はこう話す。
どんな人でも、膝を突き合わせて対面している相手と、ウェブ会議システムの中の相手とでは伝える力は変わってくる。ましてやリモートワークで自宅にいる人に営業するとなれば、相手は子供の世話や家事をしたり、テレビを見たりして商談に応じているかもしれない。今回の取材では、多くの販売部員が「5割以上実績が落ちた」と嘆く営業のオンライン化。その背景には、不慣れや環境の不備以上に、“PCの画面越しだと相手はこちらの話をそもそも真剣に聞かない”という、ある意味で当たり前の現実があると言える。
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