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(写真:PIXTA)

 コロナ禍でノルマ達成に苦しむ各社の営業部員たち。「我が社はもともと人材紹介や医薬品販売のような高いノルマを設定していないから、大きな問題にはならない」。そんな声もあるかもしれないが、恐らく早計だろう。コロナ禍では一部業界を除き、営業部員の「売る力」は落ちる。そうなれば、普段は“普通のノルマ”であっても、非常時には「とんでもない高い目標」になりかねない。

 コロナ禍で販売力が低下する原因は2つ。1つは外出自粛の動きなどに伴う市場の低迷、市況の悪化。そしてもう1つは、対面営業が困難になる中で、これまで営業部員が使ってきた様々な武器が“使用不可能”になるからだ。

地図を片手に突撃訪問する営業スタイルは、令和時代のコロナ禍で厳しさが増している(写真はイメージ、PIXTA)

 例えば飛び込み・ローラー営業。昭和や平成の時代には「住宅地図を片手に担当エリア内の全顧客を訪問する」という営業を展開する企業が、数多く存在した。

 訪問件数は1日あたり数百件。一見、非効率にも思える手法だが、店舗や事業所などへの営業の場合、丁寧に事前に電話やメールでアポイントを取るよりも「いきなり訪問した方が有効」といわれ、社員の精神力を鍛え上げる意味合いでも、こうした手法を導入する企業は多かった。

 もちろん近年は、不在の確率が上昇したことや、過酷な営業への批判などもあって下火になりつつある手法ではあるが、今後、コロナ禍が長引けば、下火どころか絶滅しかねない。

活躍の場失う「同曜日同時間訪問」

 顧客との接触回数を増やすことで、信頼感を醸成する「地域密着型営業」も同様に、厳しい状況に置かれている。

 営業力の高さで知られる事務機器販売会社の創業者I氏が開発した営業手法の中に、「同曜日同時刻訪問」というワザがある。

 I氏が大手事務機器メーカーで営業部員をしていたころの話。担当は、図面などを複写する際に用いる工業用感光紙で、戦後の傷跡が残る日本だったが、東京から多摩川を渡った川崎の工業地帯には、電機メーカーなど感光紙ユーザーが既に集まっていた。ここでI氏が実施したのが、月曜は大師線、火曜は南武線、水曜は横須賀線などと曜日ごとに鉄道路線を決め、「沿線にある見込み顧客を毎週同じ曜日の同じ時刻に訪問する」ことだった。