安倍晋三前首相が「台湾有事は日本有事である」と発言して話題となった。キヤノングローバル戦略研究所の伊藤弘太郎・主任研究員はさらに「台湾有事は韓国有事」であると指摘する。それはなぜか。中国から見て、韓国軍および在韓米軍はどのような存在なのか。

(聞き手:森 永輔)

2017年の米韓軍事演習に参加した米軍の「F-22ラプター」(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
2017年の米韓軍事演習に参加した米軍の「F-22ラプター」(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

安倍晋三前首相が12月1日、講演の中で「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と発言し、中国が抗議する一幕がありました。台湾有事が外交・安全保障の専門家の注目を集めています。こうした環境において、伊藤さんは「台湾をめぐる重要なプレーヤーとして韓国にも注意を払うべきだ」と主張しています。

伊藤弘太郎・キヤノングローバル戦略研究所主任研究員(以下、伊藤):台湾有事が日本有事であるのと同様に、韓国にとって台湾有事は韓国有事です。米軍の介入を妨げるべく、在韓米軍の基地を中国軍が攻撃・破壊しようとすることが十分想定されます。もし、そうなれば、米韓相互防衛条約の発動条件を満たすだけでなく、韓国が自衛権の発動を検討することにもなります。

 これは、韓国にとって最も考えたくない事態です。台湾有事のとばっちりで自国が戦場になるわけですから。

<span class="fontBold">伊藤弘太郎(いとう・こうたろう)</span><br> キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。<br> 専門は韓国の内政・外交安全保障政策および東アジアの国際関係。2001年に中央大学総合政策学部を卒業、17年に同大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学。衆院議員事務所、日本国際交流センターでの勤務を経験。内閣官房国家安全保障局にて、参事官補佐として韓国を中心とする東アジア地域の政策実務に携わった後、21年1月から現職。淑徳大学コミュニティ政策学部兼任講師や立命館大学共通教育推進機構客員准教授も務める。 (写真:菊池くらげ、以下同)
伊藤弘太郎(いとう・こうたろう)
キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。
専門は韓国の内政・外交安全保障政策および東アジアの国際関係。2001年に中央大学総合政策学部を卒業、17年に同大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学。衆院議員事務所、日本国際交流センターでの勤務を経験。内閣官房国家安全保障局にて、参事官補佐として韓国を中心とする東アジア地域の政策実務に携わった後、21年1月から現職。淑徳大学コミュニティ政策学部兼任講師や立命館大学共通教育推進機構客員准教授も務める。 (写真:菊池くらげ、以下同)

中国が恐れる在韓米軍の出動

日本では、沖縄をはじめとする在日米軍基地が中国軍に攻撃される事態が懸念されています。韓国も同様の懸念を抱いているのですね。

伊藤:その通りです。2016~17年に起きたTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)問題がその蓋然性の高さを示していると言えます。米国と韓国は、北朝鮮の弾道ミサイルに対抗するためミサイル防衛システムTHAADを配備すると説明していました。けれども、それと同時に、中国によるミサイル攻撃も意識していたとみられます。中国は、黄海をはさんで韓国の対岸にある山東省に弾道ミサイルの発射施設を置いており、韓国全土を射程に収めていますから。

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