敵基地攻撃能力を日本企業の力で整える
スタンド・オフ・ミサイルの関連でお伺いします。松川さんは敵基地攻撃能力を保持する必要性についてどのように考えますか。
松川:当然、必要と考えます。日本の周囲の国はいずれも日本を射程に収めるミサイルを配備しています。日本も保有しなければ抑止力が十分確保できず、パワーバランスが保てません。このとき、日本が自前で開発・製造できる体制も整えるべきです。
もっとも、「敵基地攻撃能力」という言葉は先制攻撃と勘違いされる恐れがあるので「反撃力」など、より適切な用語はあろうかと思います。
改定する国家安全保障戦略でも「一丁目一番地」として取り上げられることを期待します。
私は以下を明記すべきだと考えます。①日本は攻撃されるのを座して待つことはない、②攻撃されることが確実な段階となれば、それを防ぐために相手国領域内を攻撃することもあり得る、③そのため日本が独自の判断で行使することができる攻撃力を保持する。
日本に対する攻撃を相手国にためらわせることが主眼です。日米同盟はもちろん今後とも重要であり、日米同盟の下で米国の打撃力が重要な抑止力であり続けます。しかし、米国に全面的に頼るのではなく、日本が独自に対処する意志を示し、体制をつくることが必要です。
米中のパワーバランスが拮抗に向かい、米国がアメリカファーストで内向きの傾向にある中で、日本を含む同盟国が自律的能力を一層高めることを米国自身も期待しています。日本が能力を上げてこそ、日米同盟も強化されるのです。
敵基地ではなく、日本を攻撃するミサイルを運ぶ戦闘機や爆撃機、艦艇を攻撃の対象にすべきだとの意見も出始めました。
松川:攻撃する対象が何になるかは技術的な問題なので、その時々の個別の状況および技術の進展に合わせて考えればよいと思います。
あるときは相手国の航空機や艦船が対象かもしれません。またあるときは、相手国がサイバー攻撃を仕掛けるために使用する装備かもしれない。今は戦争のドメインが多様化しており、サイバー攻撃によって日本の防衛力の無力化を図ろうとするでしょうから。いずれ宇宙が舞台になることもあるでしょう。
ポイントは、相手に日本を攻撃する気を起こさせない、抑止するのに十分な能力と方針を持つことであり、仮に攻撃されたときには日本自身の判断で適切に対処できる能力なのです。
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