「お客は自衛隊だけ」では維持できない

 方針を明示した上で、次の2つを具体的に進める必要あります。第1は「お客は自衛隊だけ」という状態を改めること。第2は随意契約の拡大です。

 「お客は自衛隊だけ」では利益が上がるはずがありません。よって、防衛装備品の海外移転を国がバックアップして積極的に進めるべきです。

 政府は2013年12月に国家安全保障戦略を閣議決定して、武器輸出三原則に代わる新たな原則を定めると決めました。そして翌年、防衛装備移転三原則(以下、新三原則)を閣議決定しています。しかし、その内容は「移転してもいいよ」という消極的なレベルにとどまります。

 しかも、この新三原則の運用に過度に厳しい部分があります。例えば、防衛装備品を展示会などで外国の関係者にみせるだけでも、第三国移転に関する同意書を求めるよう義務づけています。試作品を提供する場合も同様。こんな面倒くさい手続きを求めていては、売れるわけがありません。

新三原則は防衛装備品の海外移転を認める条件として、購入した国がそれを第三国に移転する場合、日本の同意を事前に得るよう義務付けています。日本の安全を害する国や紛争当事国に移転されるのを防ぐための措置ですが、運用が厳しすぎるのですね。

松川:そうです。原則自体は正当でも、運用が厳しすぎる。現状は自分の首を自分で絞めているようなものです。

 例えば、新三原則の運用において、「部品」に対する規制を緩めてもよいと考えます。新三原則は「我が国の安全保障の観点から、特に慎重な検討を要する重要な案件については、国家安全保障会議において審議するものとする」と定めています。販売するのが飛行機や艦船などの完成品でなく部品で、かつ売り先が米国や英国など我が国と親密な信頼関係にある国であれば、手続きはもっと簡素化してよいでしょう。

 問題は新三原則にとどまりません。防衛装備品の売買に伴うオフセット(相殺)要求に対しても国が支援すべきだと考えます。

相手国が「日本から防衛装備品を購入するから、その○%に相当する金額のインフラを建設してくれ」とか、「我が国の企業から部品を購入してほしい」といった要求が来る。

松川:こうしたオフセット要求は企業のみの手に負える話ではありません。政府の全面的支援が必要です。例えば政府開発援助(ODA)資金を給付することで相手国の要求を満たすといった措置が考えられます。日本政府も努力はしています。しかし、他の国はもっと国が前面に立ってやっています。

 日本企業が開発した装備品を、同盟国やそれに準じる国に売ることができれば、企業が力を付けられるだけでなく、同盟や防衛協力関係の深化にもつながります。同じ装備品を使用すれば相互運用性が高まる。装備品の使い方の指導や訓練を通じて人的な関係も深くすることが期待できます。ですから、防衛装備品の海外移転は日本の防衛に直結する意義も有するのです。

 防衛省も努力はしています。しかし、売ることに関するノウハウが十分ではありません。これまで受注するのは防衛省のみという前提の下で防衛装備品を公正に調達することばかり意識してきましたから。

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