日本の防衛産業は「存続の危機」を迎えることになりかねない。自民党の松川るい参院議員はこうした危機感を抱く。日本の防衛産業に落ちるお金は減っており、企業が投資するインセンティブが小さくなっているからだ。同議員は、改定が予定される国家安全保障戦略に、防衛産業の維持・強化を「安全保障政策」として書き込むべきだと訴える。海外移転を拡大するため、「日本版FMS(対外有償軍事援助)」を整えることにも積極的な姿勢を示す。

(聞き手:森 永輔)

護衛艦「いずも」。建造はJMU(写真:ロイター/アフロ)
護衛艦「いずも」。建造はJMU(写真:ロイター/アフロ)

松川さんは最近、防衛産業を維持・強化することの重要性を強調されています。それはなぜですか。

松川るい参院議員(以下、松川):私は政治家として「何とかしなければならない」と考えることを心の中の黒い手帳に書き込んでいます。その第1番が防衛産業の維持・強化です。

<span class="fontBold">松川るい(まつかわ・るい)<br />参院議員</span><br />自民党・国防部会長代理。1993年、東京大学を卒業し外務省に入省。条約局法規課課長補佐、アジア大洋州局地域政策課課長補佐、軍縮代表部(スイス)1等書記官、国際情報統括官組織首席事務官、日中韓協力事務局事務局次長(大韓民国)、総合外交政策局女性参画推進室長などを歴任して2016年に退職。同年、参院議員に初当選。菅義偉政権で防衛大臣政務官を務めた。(写真:菊池くらげ、以下同)
松川るい(まつかわ・るい)
参院議員

自民党・国防部会長代理。1993年、東京大学を卒業し外務省に入省。条約局法規課課長補佐、アジア大洋州局地域政策課課長補佐、軍縮代表部(スイス)1等書記官、国際情報統括官組織首席事務官、日中韓協力事務局事務局次長(大韓民国)、総合外交政策局女性参画推進室長などを歴任して2016年に退職。同年、参院議員に初当選。菅義偉政権で防衛大臣政務官を務めた。(写真:菊池くらげ、以下同)

 菅政権で防衛大臣政務官として働く機会を得、さまざまな防衛産業を視察に訪れました。現場で「今は○○をつくっていますが、この先、続けていけるかどうか分かりません」というお話を数多く耳にしたのです。

 防衛省・自衛隊が政策を練っても、それを実行するには防衛装備品を造り、維持しなければなりません。そのためには企業が技術者を確保し、事業を継続できる環境を保持しなければならない。技術革新が進む中、装備品を進化させるための投資も必要です。

 しかし、安定した利益を継続して出すことが見込めない現状では、企業が防衛装備品の生産を続けていくのは難しい。防衛産業の顧客は現在、防衛省オンリーです。防衛省からの受注が減ればダイレクトに影響を受ける構造になっている。また、防衛産業の維持は防衛政策そのものである特殊事情があるにもかかわらず、通常の産業と同様の規制を受けることによる弊害もあります。

 企業から直接話を聞くことで、実情が実感を持って理解できました。

 米国から購入する装備品が増えているのも懸念材料です。日本の防衛費はGDP(国内総生産)の1%未満に過ぎません。そのうちおよそ半分は人件費で装備品に回せる金額は大きくありません。それなのに米国から購入する装備品が増えている。第5世代戦闘機F-35は米国から買うしかありません。この結果、日本の防衛産業に落ちる金額は小さくなっているのです。

 日本経済が大きく成長していた時期ならば、大きな企業は、防衛装備品の事業がもうからなくても、それ以外の事業で支えることができたかもしれません。しかし今はそれも難しくなっています。

 このまま放置すれば防衛産業は存続の危機を迎えかねません。「何とかしなければ」との思いを強くしました。

防衛産業を維持・強化するために何が必要ですか。

松川:防衛産業の維持・強化は、産業政策ではなく、防衛政策として取り組むべきです。防衛産業の維持は国家安全保障の根幹そのものなのですから。

 具体的には、岸田文雄首相が改定する意向を示した国家安全保障戦略をはじめとする関連文書に以下の点を書き込むべきだと考えます。

  • 防衛産業の維持・強化は安全保障戦略そのものであり、他の通常の産業と同列に扱うべきでない。
  • 防衛装備品の海外移転を防衛政策として積極的に推進する。そのために、防衛装備庁を中心に十分な体制を国が責任を持って整備すべきである。また、防衛装備移転三原則の過度に厳しい運用を適切に緩和する。
  • 防衛技術において、民間技術の活用を積極的に進める(民間技術からのスピンオンの促進)。

 今でも防衛産業を「死の商人」と見る向きが存在します。しかし、今やそのような時代ではありません。発想を根本的に改める必要があります。防衛産業は日本の海や空を守る重要な産業であることを国として発信するのです。現状は、防衛装備品の契約に関わるリスクの全てを企業が負っています。しかし、本当に必要な装備品や技術については、政府が基本的にリスクを負い、主導的に維持・強化を推進する方針を国家安全保障戦略に明示する。

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