ポツダム宣言第8項に何が書いてあるかというと、カイロ宣言に関することです。カイロ宣言には「台湾は中華民国に返還する」と書いてある。日本は、サンフランシスコ平和条約で台湾の領有権を放棄していますから、領有権がどこに移ろうと何も言えません。しかし、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持することで、「台湾は中国に返す」ことを明確にしてしまったのです。
日本の立場は、米国の立場と比べると欠けている部分が1つあります。それは、台湾関係法です。日本は台湾関係法を作らなかった。私は、これは最大の失敗の1つだと今でも思っています。台湾関係法を作っておけば、それに基づいて日本は、台湾との関係をより深くすることができたかもしれません。
「戦ったら負けるかもしれない」と中国に思わせる戦略
宮家氏:下のスライドは、ペロシ下院議長が訪台した8月3~4日の状況です。赤丸で示したところは与那国島で、台湾から111キロしか離れていません。
中国はペロシ氏の訪台を受けて、6カ所の広大な軍事訓練区域を設定し、軍事演習を開始。4日には、台湾の周辺海域に向けて弾道ミサイルを撃ち込みました。
私が一番気になるのは、中国が台湾周辺海域に設定した6カ所の軍事訓練区域です。「ああ、ついに来たか」と思いました。これは、中国人民解放軍が台湾を包囲する、つまり海上封鎖をする予兆です。しかも、撃ち込んだミサイルは地対地ミサイル。陸上のターゲットを攻撃する意思を示したわけです。
では、陸上のどこを攻撃するのか。中国軍にとって最も危惧するシナリオは、中国が台湾に軍事攻撃をかけたときに、在日米軍が動くことです。
であるならば、中国が本気で台湾を軍事制圧しようと思ったら、2つのことが起こり得ます。
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