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日本は中国、韓国と初のFTAを結んだ(写真:AP/アフロ)

日本と中国、韓国、ASEAN加盟国など15カ国が11月15日、アジアのメガ自由貿易協定「RCEP」に署名した。これは、もともと米国主導で始まった「TPP11」や、中国が独自に進める「一帯一路構想」とどのような関係にあるのか。米中の覇権、勢力争いの舞台であることが注目されるが、話はそれにとどまらない。日本にとってRCEPが持つ意義とは何か。

(聞き手 森 永輔)

浦田秀次郎(うらた・しゅうじろう)氏
早稲田大学名誉教授。専門は国際経済学、開発経済学。1950年生まれ。73年慶應義塾大学経済学部卒業。78年、米スタンフォード大学大学院博士号取得。同年にシンクタンクの米ブルッキングス研究所研究員に。81年に世界銀行エコノミスト。88年以降、早稲田大学社会科学部助教授、同大学大学院アジア太平洋研究科教授を歴任。2020年から現職。(写真:加藤 康)

日本と中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国など15カ国が11月15日、東アジアの「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」に署名しました。日本はすでにアジア・太平洋地域の国々が参加する「TPP11(包括的かつ先進的TPP協定=CPTPP)」に加盟しています。RCEPとTPP11はどのような関係にあると整理すべきでしょうか。

浦田:私はアジア・太平洋地域経済の最終的な統合「FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)」に至る過程に生じた、発展段階の異なる2つの枠組みととらえています。FTAAPは、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の参加国・地域で構成する超広域のFTA(自由貿易協定)構想です。

「RCEPとTPPは覇権争いの道具」との見方は一面的

 2つの枠組みの一方であるTPP11は、関税の自由化率も高く、守るべきルールも多様かつ厳格な敷居の高いFTAです。ルールというのは、政府調達の開放や国有企業に対する優遇措置の禁止、電子商取引の自由化、労働や環境に関わる規制などですね。TPP11は欧米流の発想に基づいており、「法の支配」が背景にあります。

 これに対してRCEPは、自由化率が相対的に低く、守るべきルールも緩いFTA。TPP11が課すルールを順守するのが難しい段階にある国々は、まずRCEPに加盟し、「ルールを守る」といった作法を身につけるとともに、経済発展を加速させる。その後、TPP11への加盟に歩みを進める。TPP11の加盟国が増え、FTAAPの誕生につながる。よってRCEPは、TPP11を補完する性格も備えていると考えています。

TPP11はもともと米国が主導していた「中国はずし」の経済圏、RCEPは中国が主導する「米国抜き」の経済圏という見方があります。両者は対立するものなのでしょうか。