ドナルド・トランプ前米大統領が11月15日、2024年に行われる大統領選挙に出馬する意向を明らかにした。米国の分断が再び進むことが懸念される。注目の対中国政策はバイデン大統領と異なる。バイデン氏が、中国の専制主義を問題視するのに対し、トランプ氏は中国が大国であることに神経をとがらせる。この差が台湾のありようにも影響する。それはなぜか。拓殖大学の川上高司教授に聞く。
(聞き手:森 永輔)
ドナルド・トランプ前米大統領が11月15日、2024年に行われる大統領選挙に出馬する意向を明らかにしました。トランプ氏の意図をどう考えますか。
川上高司・拓殖大学教授(以下、川上氏):トランプ氏は、17~21年のトランプ政権の続きをやりたいのだと思います。その柱はアメリカ・ファースト(米国第一主義)です。外交面では、同盟関係は軽視。同盟国に対しても、競争相手である中国に対しても、こん棒外交を展開することでしょう。まずは米国の国益を押し付ける。厳しい要求を出した後、譲歩を迫り、ある程度のところで「ディール(取引)」する。

米国の分断、再び
内政面では、前トランプ政権の時と同じく「見捨てられた白人」の味方として振る舞うと考えます。彼らを“ディープステート(陰の政府)”*から解放し、彼らの利益に沿った政策を展開する。彼らは、20年の大統領選は民主党に「盗まれたもの」、21年1月の連邦議会襲撃は「仕掛けられたもの」と信じ、この2年間、トランプ支持を続けてきました。今回の立候補は彼らに押されてトランプ氏が立つ、という面もあると思います。
トランプ氏や支持者の心境を言葉にすれば“Trump is back.” “Make Trump president again.”というところでしょう。このため、24年の大統領選挙戦を通じて米国の分断が再びあらわになるのは必定です。
トランプ氏は機密文書を持ち出したことなどについてFBI(米連邦捜査局)の捜査を受けているほか、複数の案件で訴追される可能性があります。これを逃れるためとの見方があります。米ニューヨーク・タイムズはこの点に注目する記事をいち早く掲載していました。
川上氏:そういう事情もあるでしょう。仮にトランプ氏が再び大統領になれば、バイデン大統領や関係者を司法に訴え、泥沼の展開となることが予想されます。
例えば、バイデン氏の息子のハンター氏が、バイデン氏の存在を背景にウクライナの企業から多額の報酬を得ていたとして、トランプ氏がゼレンスキー大統領に捜査を求めたとされるウクライナ疑惑があります。また先ほど言及したように、トランプ氏は、20年の大統領選は不正だったと主張しています。これらを材料にバイデン氏や関係者にトランプ氏が“司法攻撃”を仕掛ける構図です。
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