トランプ氏による支援は、民主党にとって実は神風だった(写真:AP/アフロ)
トランプ氏による支援は、民主党にとって実は神風だった(写真:AP/アフロ)

11月8日、米国で中間選挙が行われた。議席は確定していないが、共和党が実質的に勝利する可能性が高い。そうなれば、予算の権限を握る議会の協力が得られず、政策が停滞する恐れがある。歴代政権はそのときお金のかからない外交に力を入れた。しかし、バイデン政権が直面するウクライナ紛争や台湾有事の懸念はいずれも多額の予算が必要となるかもしれない。米国政治に詳しい、前嶋和弘・上智大学教授に聞いた。

(聞き手:森 永輔)

米国で11月8日、中間選挙が行われました。現在(11日11日午前7時)も開票作業が続いています。まだ確定していない議席が残っていますが、前嶋さんは今回の選挙のどこに注目しましたか。

前嶋和弘・上智大学教授(以下、前嶋氏):大きく3つお話しします。

下院を落とせば政策は進まない

 第1は実質的に共和党が勝利するであろうことです。現時点で下院の総議席数435のうち211議席を獲得しています。この先、どんでん返しが起こる可能性はゼロではありませんが、共和党が過半数を押さえるでしょう。そうなれば、バイデン政権は分割政府となります。米国では、「大統領」を出した党と「上院」の多数党、もしくは「下院」の多数党が異なる状態を「分割政府(divided government)」と呼びます。

前嶋和弘(まえしま・かずひろ)
前嶋和弘(まえしま・かずひろ)
上智大学総合グローバル学部教授。専門は米国の現代政治。中でも選挙、議会、メディアを主な研究対象にし、国内政治と外交の政策形成上の影響を検証している(写真:加藤 康)

 バイデン政権は下院共和党を説得しなければ、望む政策を進めることができなくなります。民主党と共和党の間で分極化が進む今、この説得は容易ではありません。分極化とは、保守である共和党とリベラルである民主党との政策が大きく離れた状態にあることを指します。

民主党はまだ、上院で過半数(50議席、非改選議席を含む)を維持する可能性が残っています。現在獲得しているのは48議席。ネバダ、アリゾナ、ジョージア、アラスカの4州の議席が確定していません。

前嶋氏:仮に民主党が上院で多数派を維持しても、下院で共和党が多数派になればあまり意味はありません。日本の衆院が持つような優先権を、米国の上院は持っていないので。

 ただし、裁判官の承認については上院が重要な権限を有します。

最高裁判事の入れ替えは当面ないのでは。

前嶋氏:あるとすれば、誰かが亡くなったときですね。確かに、現在の米連邦最高裁判所判事にすごく高齢な人はいません。最高齢のトーマス判事が74歳です。ただし、人の死はいつ訪れるか分かりません。

 また、上院が承認権限を持っているのは最高裁判事だけではありません。地方裁判所や高等裁判所の判事の承認も上院の判断にかかっています。トランプ前大統領は、フェデラリストソサエティーという保守派の団体に所属する法曹を次々と地裁・高裁に送り込みました。同氏は「初代大統領のワシントン以来、最も多くの判事を任命したのは自分だ」と豪語していました。

次ページ 逆トランプ効果が神風に