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米大統領候補による2回目のテレビ討論会が10月22日に実施された。 トランプ大統領はバイデン氏を攻めあぐね、形勢を逆転することができなかった。 米国政治に詳しい中山俊宏・慶応義塾大学教授はその理由を「『対トランプ』という観点にしぼれば、バイデン氏が最強の候補だからかもしれない」とみる。果たして、その理由は。

(聞き手:森 永輔)

ディベートが成立したことが評価される討論会(写真:AFP/アフロ)

中山さんは、今回のテレビ討論会のどこに最も注目しましたか。

中山:テレビ討論会がディベートとして成立するか否かです。

かなり期待値が低かったのですね。

中山:ええ、極めて低かったです。第1回のテレビ討論会が崩壊していましたから(「TV討論、トランプ節と横やりに屈しなかったバイデン氏」)。米テレビ局CNNのダナ・バッシュはこれを「シット・ショー("shit show"=くそみたいなショー)」と形容していました。一部のトランプ派は喜んだかもしれませんが。

中山俊宏(なかやま・としひろ)
慶応義塾大学教授。専門は米国政治・外交
1990年に青山学院大学国際政治経済学部卒業、2001年に同大学大学院国際政治経済学研究科博士課程修了。 ワシントン・ポスト紙極東総局記者や日本政府国連代表部 専門調査員を経て、日本国際問題研究所の研究員に。 津田塾大学准教授、青山学院大学教授を歴任。2014年から現職。(写真:新関雅士)

 続いて、10月15日に予定されていた次のテレビ討論会はトランプ大統領がオンライン形式を拒否したため流れてしまいました。「バイデン氏にしゃべらせない」「自らの主張をたたみかける」という手法が使えないからですね。

 なので、10月22日のテレビ討論会では、トランプ大統領がどう振る舞うかが注目されることになりました。①6つ用意されたテーマのそれぞれについて、最初の2分間はそれぞれの候補に時間が与えられる、②もう一方の候補のマイクは切る、という異例のルールが導入された。しかし、どんなルールが適用されてようと、トランプ大統領が話し続けてしまえばディベートは成立しません。トランプ大統領の発言が、バイデン氏の耳には嫌でも入ります。

 結果は、トランプ大統領が不規則発言を自制し、ディベートが成立するかたちになりました。トランプ陣営は第1回を振り返って、トランプ大統領のあの振る舞いには得るものがないと判断したのでしょう。支持率が下がってしまいましたから。民主党の候補であるバイデン氏の出来も決してよいものではありませんでしたが、支持率の差は拡大しました。トランプ大統領も周囲の意見に耳を貸さざるを得なかったのだと思います。