北朝鮮が10月10日未明、朝鮮労働党の創立75年を祝う軍事パレードを挙行した。朝鮮半島の動向に詳しい武貞秀士・拓殖大学大学院客員教授はここから、 核放置のままで米朝関係が進展する可能性を読み取る。隠れたキーワードは中国だ。さらに、核を背景とする北主導の南北統一のシナリオを考える。(聞き手:森 永輔)

軍事パレードに満面の笑みで臨む金正恩委員長(提供:KNS/KCNA/AFP/アフロ)

北朝鮮が10月10日未明、朝鮮労働党の創立75年を祝う軍事パレードを挙行しました。金正恩(キム・ジョンウン)委員長の演説、新型とみられるICBM(大陸間弾道ミサイル)と潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に人々の耳目が集まりました。武貞さんは、どこに注目しましたか。

武貞:まず一連の式典が、未明という異例の時間帯に行われたことです。加えて、北朝鮮が米国と韓国のそれぞれに発したメッセージに注目しました。

 未明の式典は、金正恩委員長が権力を誇示したのです。

武貞 秀士(たけさだ・ひでし)氏
拓殖大学大学院客員教授 専門は朝鮮半島の軍事・国際関係論。慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。韓国延世大学韓国語学堂卒業。防衛省防衛研究所に教官として36年間勤務。2011年、統括研究官を最後に防衛省退職。韓国延世大学国際学部教授を経て現職。著書に『韓国はどれほど日本が嫌いか』(PHP研究所)、『防衛庁教官の北朝鮮深層分析』(KKベストセラーズ)、『恐るべき戦略家・金正日』(PHP研究所)など。

え、権力を誇示したのですか。

武貞:そうです。似たようなことを、金正恩委員長の父親である金正日(キム・ジョンイル)総書記もやっていました。側近に報いるべくプレゼントを与えるのに、贈呈式を深夜に行うのです。

それは、金正日総書記と、プレゼントをもらう側近の2人で行うのですか。

武貞:そうではありません。ほかにも人を集め、そのオーディエンスの前で、贈呈するのです。こんな深夜にも自由に人を集め、式典を行う力がある、ということを誇示するためでした。

驚きました。てっきり、軍事パレードの実態を米国などに見せたくないからだと考えていました。今回も、「新型とみられるICBMが本物なのか、張りぼてなのか、定かでない」との報道があります。

武貞:米国の監視体制が持つ暗視能力をもってすれば、パレードに参加した兵器がどんなものか労せずして認識できると思います。未明にパレードを行っても、衛星の目から逃れることはできないでしょう。それに、見せたくなければ、最初から軍事パレードをやらないのではないでしょうか。

 国際世論を向こうに回してのいたずらという面もあったと思います。誰もが想像していない時間にパレードをすることで世界を驚かせたかった。実際、10日に何が起こるだろうと注目していた人々は拍子抜けしたと思います。

 金正恩委員長が、米プロバスケットボール、NBA元選手のデニス・ロッドマン氏のファンであることは有名です。同委員長はロッドマン氏の観客をあっと言わせるプレーがお気に入りなのでしょう。米国のドナルド・トランプ大統領と気が合うのも、この文脈に通じるものだと思います。

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