主戦場はAI、日本人が知らないAI戦争の脅威

ハイテクのお話が出たので、お伺いします。米国のエコノミック・ステイトクラフトの主たる対象は今のところ、ファーウェイをはじめとする5社。それから、北京字節跳動科技(バイトダンス)の動画投稿サービス「TikTok(ティックトック)」と騰訊控股(テンセント)ですね。これらの企業に共通するのは何でしょう。

國分:私はAI(人工知能)だと見ています。ファーウェイをはじめとする5社を見ると、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)と浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)は監視カメラのメーカーです。つまり、データを取得するデバイス。ファーウェイZTEは通信機器会社で、データの通り道です。米国は、中国がこれらの企業の機器を通じて集めたデータによって、AIによる機械学習の精度を高めることを恐れているのだと思います。

 AIは軍事の技術に直結するからです。AIの進化が軍事に及ぼすインパクトを恐れている。例えば、特定ターゲットを狙う小型の自爆型ドローンが、米国では映画の中でも描かれるようになりました。小型のドローンがカメラを装備していて、ターゲットを顔認証する。いったんロックオンしたら、どこに行こうと追ってきます。そして最後は自爆してターゲットを道連れにする。

 米国の軍では、ドローン攻撃に携わる軍人のメンタルケアが重視されるようになりました。「本当に攻撃してよいのか? この標的は正しいのか?」とためらいをもたらすケースが多々あるからです。なので、AIで自動化できるものは自動化してしまいたい。しかし、自由主義世界では、AIによる戦争を禁じようとする趨勢があります。これに対して、中国はフリーハンドで開発を進められる。

 日本は軍事への関与が少ないため、米国が感じているこの切迫感を理解できていないと思います。

米国は米輸出管理規則(EAR)において14分野のデュアルユース(軍民両用)技術を輸出管理の対象にしています。AIはこの1分野ですね。他の分野にもエコノミック・ステイトクラフトの対象を広げていくでしょうか。

國分:それはあり得ると思います。ただし、すでに非常に広い分野をカバーしているので、範囲のさらなる拡大は考えづらいですが、網のかけ方はどんどん厳しくなっていくと思います。例えば半導体の場合、米国製の半導体製造装置にとどまらず、回路設計に用いるソフトウエアが米国製であれば他国の企業であっても対象国への輸出を禁止するようになりました。

それによって台湾積体電路製造(TSMC)がファーウェイからの受注を停止しましたね。

 14分野に「宇宙」が抜けているのが気になっています。

國分:14分野はいずれも要素技術なので、いくつかを組み合わせることで宇宙での問題をカバーするのだと思います。

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